【解説】タイで法人を設立する際の条件と手順とは

海外進出支援に必要な法律

グローウィル国際法律事務所では、海外進出支援の事業を行っています。その中で、タイの進出については、ニーズが多いです。

タイでは、アプリの利用が広がっており、IT企業にとって、マーケットとしても魅力的とされています。

タイで法人を設立する手順と、気をつけるべき法律はなんでしょうか?まずは、タイに会社を設立する場合について、その概要を紹介していきます。

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タイにおける会社の種類

タイについては、以下のような会社の種類があります。

  • 普通パートナーシップ・・・2名以上の無限責任社員で構成されます
  • 有限パートナーシップ・・・各1名以上の無限責任社員と有限責任社員で構成されます
  • 株式会社(非公開株式会社)・・・株主はすべて有限責任で、株式の譲渡や資金調達に制限がかけられています
  • 公開株式会社・・・株主はすべて有限責任で、上場を目指す企業が採用する形態になり、株式や資金調達について制限がありません

この中で、日系企業がタイへ進出をする際に最も一般的な形態は「非公開株式会社」になります。

設立までの条件

会社が設立するまでの期間

およそ2か月くらいで、会社が設立されます。ただし、タイ投資委員会(BOI)に申請を行う場合は4か月ほどかかります。

最低資本金

資本金は、外国人×200万バーツが必要になります。

人的構成

会社を設立としては、取締役は1名以上、株主は3名以上必要になります。

法人設立までのステップ

では、実際にはどうやって法人を設立すればよいのでしょうか。

ステップ1:各種規制の事前調査、優遇措置の調査・検討

各種規制の事前調査

タイで会社設立を始める前に、まずは各種規制について調査することが大切です。

外国人事業法を始め、外為管理法、外国人職業規制法、関税法等の様々な規制が、選択するべき会社の形態などに大きく関わってきます。

優遇措置の調査・検討

タイでは、タイ投資委員会(BOI)、タイ工業団地公社(IETA)による優遇制度があります。

これらは基本的には、製造業が申請できる制度になります。

BOI・・・就労ビザの取得が円滑に行なえる様になったり、法人税および輸入関税が免除されたりします。

IEAT・・・IETAが運営・管理する工業団地に入居する事業者に対し、BOIの投資奨励を受けなくても、BOIと同様の恩典が受けられます。

ステップ2:会社形態の決定

ステップ1を踏まえ、どの会社形態で進出するかを決定します。

概要でも紹介していますが、タイに進出する日本企業の多くは非公開会社を選択しています。

ステップ3:会社設立手続

会社の設立登記には、通常登記手続きと、インターネット登記手続き(タイ語のみ)があります。

タイの会社設立では、商号(会社名)の予約は、新会社の発起人が行う必要があります。

管轄当局に、類似の商号がないか・省令で禁止する商号でないかを確認し、問題がなければ、その商号の使用許可が得られます。通常は2〜3日かかりますが、WEBからの申請であれば、即日予約可能です。

使用許可がおりた商号は30日間有効ですので、期間内に申請者(発起人)が基本定款へ記載し、登録します。30日を過ぎた場合は、商号の予約は失効となり、再度予約しなければいけません。

基本定款 (MOA) の記入・登記

基本定款に、必要事項を記入します。記載事項は以下のとおりです。

  1. 会社名(商号)
  2. 資本金、発行株式数、一株あたりの額面価格(通常は1,000バーツ・100バーツに設定するケースが多い)
  3. 会社設立目的
  4. 発起人の氏名、住所、職業、国籍、署名および各人が出資する株式数(発起人は最低3人以上必要となります)
  5. 登記した会社が所在する住所
  6. 株主の負う責任について

必要事項を記入したら、基本定款を登記します。発起人3名が基本定款にサインした上で、登記料を支払えば完了です。

基本定款の登記料は登記資本金の額で決まり、登記資本金10万バーツにつき50バーツ(最低500バーツ、最大2万5,000バーツ)が必要です。

登記が完了すると、株式の引受を行います。

会社設立総会の開催

株式の引受まで完了したら、発起人は設立総会を遅延なく開催し、次の事項を決定しなければなりません。

  1. 付属定款(株主総会や取締役会などの会社の規定・優先株に関する規定など)
  2. 発起人の設立準備行為に関する承認
  3. 取締役の選任と権限の決定、監査人の指定

ここで注意するべきなのは、監査人はタイ人の公認会計士でなければいけません。

タイでは会社の規模に関わらず、全ての会社に監査義務がありますので注意が必要です。

また、タイ人公認会計士の氏名および免許番号の報告が義務づけられています。

会社設立登記 (最終登記)

設立総会開催後、事業は、発起人から選任された取締役に委ねられます。

取締役は、3ヶ月以内に会社の登記申請(最終登記)を行う必要があります。3ヶ月以内に登記されなかった場合は、会社登記ができなくなってしまうため、注意が必要です。

登記申請の際は、以下の項目が必要になります。

  1. 株主氏名、住所、職業、国籍、持株数(株主は、常時最低3人必要になります)
  2. 取締役および代表取締役の氏名、住所、職業
  3. 代表取締役の代表権(サイン権)の形態(単独署名か共同署名か)および署名
  4. 本社および会社の各支所の住所
  5. 付属定款(株主総会、取締役会等に関する会社規則)
  6. 株式により受領した初回資本金払込み総額(登記資本の25%以上。なお、外国人の労働許可の条件となる資本金額(1人につき最低200万バーツ)はこの実際振込額になります

また、BOI認可企業は生産開始までに登録資本の100%の振込が条件となっていますので、注意が必要です。

登記局に支払う会社設立登記料は、資本金10万バーツにつき、500バーツ(最小5000バーツ、最大25万バーツ)が必要になります。

ステップ4:Tax ID番号の取得と税務登録

Tax IDの取得

タイの会社では、日本と同様に給与を支払う際に源泉徴収を行う必要があります。その際に個人や法人を特定するためにTax IDが使われます。

設立登記の日から60日以内に、歳入局でTax ID番号(法人ID)を取得する義務があります。申請の際に必要な書類は以下のとおりです。

  1. 賃貸契約書のコピー
  2. 家主のその場所の住民票(タビアンバーン)のコピー
  3. 家主の住んでいる住民票(タビアンバーン)のコピー
  4. 家主のIDカードのコピー(その場所の所有者が会社の場合は、会社登記簿とサイン権者のIDカードのコピー)

税務登録(VAT

タイ国内で販売・提供される物品・サービスには「 VAT(付加価値税 税率7%) 」が課税されます。

日本でいう消費税のようなものです。商品販売やサービス提供を予定している企業は、この納税者登録をしていないと控除や還付請求に利用できないので注意が必要です。

設立登記の日から30日以内に、管轄の税務署で申請を行います。申請の際に必要な書類は以下のとおりです。

  1. オーナーの同意書
  2. 賃貸ビル自体の住民票(タビヤンバーン)
  3. 事務所物件の賃貸契約書
  4. 会社登記事項証明書
  5. サイン権のある取締役1名のパスポートコピー
  6. 会社所在地の地図
  7. 会社の存在を証明する写真(看板、ビル、エントランス、執務室など)
  8. 月間予想売上高の情報

ステップ5:就労ビザの取得と労働許可の取得

就労ビザの取得と労働許可取得は、タイの外国人就業規制法で定められており、違反した場合は雇用者側にも罰則が設けられています。

会社を設立すると労働許可の取得が可能になりますが、その前にまず、就労ビザ(ノンイミグラント・ビジネスビザ)を取得する必要があります。日本とタイのどちらでも取得することが可能です。

日本では、必要書類を駐日タイ王国大使館もしくは在日タイ王国領事館に提出します。

タイでは、必要書類を移民局(イミグレーション)へ提出します。

労働許可

就労ビザが取得できたら、労働許可(ワークパーミッド)を取得します。タイ国内の労働省雇用局に申請します。
労働許可取得には条件があり、以下などが一般的な条件になりますので、事前に確認しておきましょう。

  • 日本人1人につき200万バーツ以上の資本金が会社にあること
  • 外国人1名につき、タイ人4名を雇用する必要

ステップ6:銀行口座の開設

タイでの法人口座の開設は、取締役の最低1名がタイの労働許可を取得していることが条件になります。

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