ユーザーが投稿できるWebサイト運営者が著作権トラブルを防ぐための対策とは【2020年9月】

著作権・商標権の法律

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ユーザー投稿サイトの運営者の責任

ユーザーから投稿してもらう投稿型サイトの場合には、著作権の問題がつきまといます。運営者としては、どのような点に注意すればよいのでしょうか?

ユーザーが、投稿した動画などのコンテンツが著作物であった場合、権利者に無断でインターネットにアップロードし、他のユーザがその動画を閲覧したり、ダウンロードできる状態にしたりすることは、著作権の侵害行為となります。

ユーザが著作権侵害行為をしていても、ユーザー投稿サイトの運営者は、ユーザーが違法な動画をアップロードし、他のユーザがその動画を視聴又はダウンロードすることができるシステムを提供しているにすぎません。

つまり違法な動画のアップロードを行っているわけではないため、動画投稿サイトの運営者は、直接著作権の侵害行為をしているわけではありません。

しかし、裁判例でも、ユーザの著作権を侵害する投稿を放置した等の事例では、ユーザー投稿サイトの運営者にも、著作権侵害の責任が認められたことがあります。

裁判例では、「ユーザによる複製行為により、本件サーバに蔵置する動画の中に、本件管理著作物の著作権を侵害するファイルが存在する場合には、これを速やかに削除するなどの措置を講じるべきである」と判示しています。

そして、ユーザー投稿サイトの運営者が、複製権を侵害する動画が多数投稿されることを認識しながら、削除せず、放置したことについて、知財高裁は、当該動画投稿サイトの運営者は、ユーザによる複製行為を利用して、自ら複製行為を行い、複製権を侵害する主体であると評価できると判断して、動画投稿サイトの運営者に対して著作権侵害を認められています。

また、「少なくとも、著作権者等から著作権侵害の事実の指摘を受けた場合には、可能ならば発言者に対してその点に関する照会をし、更には、著作権侵害であることが極めて明白なときには当該発言を直ちに削除するなど、速やかにこれに対処すべきものである。」との判断を示しています。

そして、掲示板の管理者は、著作権の権利侵害を存続させ、又は存続可能な状態にさせたことにつき、故意又は過失により著作権侵害に加担していたものと判断して、管理者に対して、著作権の侵害を認められています。

以上のように、運営者としては、ユーザーが著作権に違反するコンテンツを上げた場合、そのことを知ることができた場合、著作権者から通報された場合には、適切な対処をする必要があるのです。

ユーザー投稿サイト運営者としての対策

そのため、貴社としては、ユーザが著作権を侵害する動画を違法にアップロードしないよう、事前の対策を施すとともに、もしも違法な動画がアップロードされた場合には、事後の対策として、削除等の適切な措置を講じなければなりません。

事前の対策

まず、事前の対策として、1)ユーザに対して著作権を侵害する動画を投稿しないよう注意喚起をすることが挙げられます。

利用規約で明示することや、アップロード時に、著作権を侵害する動画でないことをチェックマーク等で確認させたうえで、アップロードさせることが考えられます。

また、2)サービスで取り扱うコンテンツについては、あらかじめJASRAC等の著作権管理権者等との間で包括的な利用の許諾を受けておくことも考えられます。

さらに、3)フィンガープリント等の技術的措置により権利侵害コンテンツを排除することが考えられます。

具体的な手法には、権利者に、あらかじめオリジナルの映像・音声データを登録してもらい(フィンガープリントと呼ばれる)、投稿された動画をそれらのデータと比較し、著作権を侵害した動画が投稿されないよう自動でチェックする手法です。

事後の対策

次に、事後の対策をみていきます。

4)権利者から著作権を侵害するものであるとの指摘を受けた場合に、実際に、著作権侵害であると判断される動画については速やかに削除することが考えられます。

これは、権利者からの削除要請を受け付ける窓口を設け、権利者から指摘を受けた場合には、著作権の侵害であると判断できる動画については、速やかに削除することになります。

また、5)定期的にアップロードされている動画を確認し、著作権侵害のおそれがある動画は削除することや、⑥著作権侵害の動画を投稿したユーザのアカウントを停止することも有効な対策であると考えられます。

違法かどうかが不明な場合の対応

ユーザー投稿サイトの管理者が、権利者から、投稿コンテンツについて、著作権侵害を理由に削除するよう求められた場合に、その投稿動画が、著作権を侵害しているといえるかどうか明らかでない場合があります。

例えば、国内のテレビ番組や映画等で公開されている作品が、非公式に動画投稿サイトに投稿されていれば、その動画が著作権を侵害するものであることは比較的明白といえますが、外国の作品や、同人誌・個人的な作品等については、必ずしも判断が容易とはいえません。

この場合には、どのような対応をとるかはケース・バイ・ケースであるものの、「迷ったら削除」という対応の方がよいと考えられます。

というのも、プロバイダ責任制限法では、ウェブサイトの管理者が、インターネット上に投稿された情報の削除や非表示措置を行った場合に、一定の免責を認めています。

また、削除を請求してきた側は、削除しなければサービス提供事業者を訴えると警告してきているのが通常です。これを無視して放置した場合には、訴訟を提起される可能性が高いのに対し、削除しても、削除された側から直ちに訴訟を提起される可能性が高いとはいえないからです。

さらに、削除請求者と動画投稿サイトの管理者との間では、契約関係がないのが通常であるため、契約によって訴訟リスクを低減させることはできないのに対し、投稿した動画を削除される者とサービス提供事業者との間にはサービスの利用規約等により契約関係があるため、利用規約等において、例えば、権利侵害のおそれがあった場合には削除したり、サービスの提供を中止したりできることを幅広に定めておくことにより、削除された者からの訴訟リスクを低減させることも可能です。

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