4つの「インターネットビジネスモデル」ごとに法律の注意点を解説

事例検証

ビジネスの法律といっても、さまざまなビジネスがあります。そこで、ビジネスモデル別に、注意するべき法律について解説をしていきます。

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ECサイト型ビジネス

これは、EC(電子商取引)サイトを立ち上げて、自分が直接顧客に商品・サービスを提供するものです。ECサイト上に自分の商品を掲載し、お客さんに買ってもらう。

まさに、いままで店舗でやっていたことを、インターネット上でやるというイメージです。最近では、動画コンテンツの配信などの無形のサービスを販売することも盛んになってきています。

この直販型のECサイト型ビジネスの場合には、まさに自分と顧客となる人との関係での法律問題を検討する必要があります。

一番よくあるトラブルが、インターネット上に掲載していた写真と届いた商品とのイメージが違うというものです。実際の店舗では、現物を見て、触ったりして、確かめてから購入するので、このようなトラブルは発生しません。ただネットショップなどでは、顧客は商品の写真や説明文などを頼りに購入するので、こういったトラブルが多いのです。

このような場合には、どこまで責任を負うのか、どこまで返品や返金に応じるのかなどについて、利用規約で定めておく必要があります。

マッチング型ビジネス

これは、自分で商品・サービスを売るのではなく、他人間の売買などを仲介するビジネスです。

ネットビジネスで仲介型ビジネスの典型例が「楽天市場」や「Yahoo!ショッピング」などの「ショッピングモール」です。

それは、「物を売りたい」という事業者と「物を買いたい」という顧客を結びつけるビジネスです。また、人と人とをつなげるマッチングサイトも出てきています。

例えば、「仕事を依頼したい人」と「仕事を受けたい人」をマッチングする「ランサーズ」や「クラウドワークス」などがあります。このビジネスでは、まず誰からお金を取るのかを決める必要があります。

「ショッピングモール」で言えば、「物を売りたい」という出店者から出店料を取るモデルが多いと思います。そうすると、出店料の定めをどうするのかがまず問題になります。例えば、月額固定制にするのか、売上に応じて従量課金にしていくのか、それらを併用していくのかといった点です。

また、このビジネスの一番のメリットであり、また怖いところは、自分が直接の当事者にならない点です。つまり、直販型と違い、他人間の契約の場を提供し、それを仲介するだけなので、実際に仕事をするのは、自分ではありません。

そこで重要になるのは、ユーザー間でトラブルになった場合に、自分はどうするのか、ということです。責任を回避するのであれば、「ユーザー間のトラブルは、ユーザー間で解決してください」という姿勢でリスクを回避するのも一つの方法です。

また、販売者がモール上に、「偽物ブランド」などの違法商品を掲載した場合など、法律を遵守しない場合に自社の責任はどうするのか、などを規定する必要があります。

フリーミアムモデル

フリーミアムとは、「フリー(free)」+「プレミアム(premium)」を組み合わせた造語で、基本サービスを無料で使ってもらい、そのうちの何割かに有料会員になってもらうというビジネスモデルです。

従来の店舗型ビジネスでも、試食・試飲が行われてきましたが、これもフリーミアムモデルです。ネットビジネスでは、クラウドサービスの「ドロップボックス(Dropbox)」や「エバーノート(Evernote)」などがこのモデルです。

また、ソーシャルゲームなどで、基本プレイは無料で遊べるようにしておいて、ゲームを効率的に進めるためには有料アイテムを手に入れる必要があるようにするというのも、フリーミアムモデルです。

このモデルでは、無料会員用と有料会員用の規定を設ける必要があります。特に有料会員は、「お金を払っている」という意識が強く、トラブルに発展するケースが少なくありません。トラブルになったときには、サイト運営者(事業者)は多額の損害賠償を請求されたりするケースが多くあります。

そうすると、有料会員に対しては、例えば、次のような規定を設けて、自分のリスクを回避する方法があります。

  • メンテナンスなどで、サービスを停止する場合があるなどを周知して、停止したことによる損害を賠償する規定をおく
  • 有料会員に対する損害賠償請求に対して、損害賠償金額の上限を定めておく

また、気をつけなけなければならないのが、宣伝文句です。

無料会員のうち、一定数が有料会員になるという仮説がフリーミアムモデル成功の前提ですから、いかに無料会員を多く集めるかがポイントになります。そうすると事業者の中には、最初に無料と書いておいて、多くの人を引きつけて、じつは追加機能で課金をする、ということを考えつくかもしれません。

しかし、宣伝時の表記の仕方に気をつけないと、法律違反になりかねません。例えば、追加サービスを利用するには、課金が必要なのに、「追加サービスも含めてすべて無料」と記載するのは、景品表示法の「不当表示」に該当し、違法です。

また問題となった事例としては、オンラインゲームなどにおいて、実際はあるアイテムを購入しないと、一定レベル以上のステージには進めないにもかかわらず、「完全無料で利用可能」としたり、クラウドサービスなどで、実際には無料のデータ容量、データの種類は限られているのに、「無料ですべてのデータを保存して、どこからでもアクセスできます」と表示した例があります。これらは景品表示法に違反します。

インターネット消費者取引に係る広告表示に関する景品表示法の問題点及び留意事項:http://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/guideline/pdf/120509premiums_2.pdf

まとめサイト(キュレーションサービス)

インターネット上で収集した情報を編集、分類し、消費者にわかりやすく伝えるまとめサイトのサービスが増えてきています。有名なところでは、「NAVERまとめ」やツイッターのまとめサイトである「トゥギャッター(Togetter)」など、さまざまなキュレーションサービスが登場してきています。

このようなまとめサイトを運営する際に気をつけたいのが、著作権に関する問題です。バイラルメディアとして知られていた「バズニュース(BuzzNews)」は閉鎖され、全記事が閲覧できない状態になり、「アットリップ(A!@attrip)」も全記事を削除し、運営を改善すると発表しました。

また、2016年には「WELQ」問題が発生し、全国的に著作権に対する問題提起がなされました。

この原因は、コンテンツの盗用です。そもそも、こういったバイラルメディアに掲載されているコンテンツのほとんどが、インターネットで公開されている面白い画像や動画、感動するエピソードを複製(コピー&ペースト=コピペ)して拡散し、大量のトラフィック(信号やデータ)を集めていたのです。

よく「インターネット上で公開されているのだから、コピペするのは自由なのではないか」という質問を受けますが、これは明らかな誤解です。

著作権法では、著作権者の許可なく、他者のコンテンツをコピペしたり、インターネット上で情報をそのまま流すこと(公衆送信)を禁じています。よって、他者のコンテンツを流用する場合には、コンテンツ作成者の許諾が必要になります。

しかし、すべてのコンテンツに対して、作成者の許諾を取ることは現実的ではありませんよね。そこで、著作権法に抵触しない方法を探る必要性があります。

著作権の例外規定

著作権の例外規定として「引用」の場合があります。著作権法では、「公表された著作物は、引用して利用することができる」と規定しています(著作権法第32条)。

では、この引用は、どのようにすればいいのでしょうか? この点、著作権法では、「公正な慣行に合致するものであり、かつ、報道、批評、研究その他の引用の目的上正当な範囲内で行なわれるものでなければならない」とされているものの、具体的にこうすればいいということは書かれていません。ただ、これまでの判例などを見ていると、次のような要件基準が必要になっていきます。

明瞭区分性

自分の作成したコンテンツと他者のコンテンツを明確に区別するというものです。区別の仕方としては、他者のコンテンツにはカギ括弧やブロッククオートをつけるなどの方法が考えられます。

主従関係

質的にも量的にも、自分の著作が「主」で、他者コンテンツが「従」の関係にあることが必要になります。

(3)出典の明示

他者コンテンツを引用する場合には、出典を明示することが必要になります。

以上のような条件を満たす必要があります。これらの要件も不明確なところが多く、どこまでがセーフで、どこからがアウトなのかという明確な基準がありません。

また、最近の判例では、これらの要件に加えて、「他人の著作物を利用する側の利用の目的」「その方法や態、利用される著作物の種類や性質」「当該著作物の著作権者に及ぼす影響の有無・程度」などを総合して考慮することが判示されています。引用にあたるかどうかは、自分で判断することなく、必ず弁護士など専門家の意見を聞くようにしましょう。

リンクを張る方法

多くのまとめサイトでは、リンクにより、他サイトの画像を、サイト内で表示させています。これは、他サイトのコンテンツである画像をサイト内で表示させているので、著作権法上、問題があるのではないかとも思われます。

しかし、リンク先のウェブページのデータは、リンク先のウェブサイトから、直接ユーザーのコンピュータへ送信されます。そうすると、リンクを張る行為自体は、リンク先の著作権をコピーしたり、公衆送信していないため、問題にならないとされています。

では、他サイトの画像や動画を自社サーバーに保存して、自社で編集し、自社コンテンツとして発表する場合は、どうなるでしょうか? この場合は、著作権法に抵触し、著作権者の許諾がない限り、違法になります。

もっとも、著作権には例外規定があり、キャッシュサーバーに情報を蓄積することは、複製権の侵害ではないとされています(著作権法第47条の8)

よって、キャッシュサーバーに他社コンテンツの情報を蓄積していて、そこから各ユーザーに配信されているのであれば、著作権法上の問題はクリアされることになります。

実際にも、まとめニュースアプリである「スマートニュース(SmartNews)」では、その「情報アーキテクチャの改訂について」において、「ユーザーがSmartNewsアプリを起動すると、SmartNewsサーバーは、ユーザーがあらかじめめ指定したカテゴリに応じてSmartNewsロボットが収集したWebページのURL、見出し、サイト名、サムネイルURLを、ユーザー端末に送信します。

それに続いて、ユーザー端末は、各WebページのURLへ逐次アクセスを行い、HTMLコンテンツを取得します。このとき、Webサイトへのアクセス負荷を軽減し、効率的な通信を実現するため、プロキシサーバを利用します。」と規定しています。

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