スタートアップやベンチャー企業が気をつけるべき「著作権」【2019年12月加筆】

著作権・商標権の法律

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著作権とは

著作権とは、著作者が自ら創作した「著作物」を排他的に利用することができる権利です。

この「著作物」とは、法律上、「思想又は感情を創作的に表現したものであって、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの」とされています。

その具体例としては、自ら創作した小説、音楽、舞踊、美術、建築、図形、映画、写真、プログラム等が著作物となり得ます。

「著作者」として認められるためには、著作物を創作すれば足りるため、登録等の手続きをする必要はなく、創作した瞬間に著作権が発生します。

ここで注意しなければならないのは、著作物となるのは、創作的な「表現」であり、創作的な「アイディア」ではありません。

少なくとも、何かしら「表現」されている必要があります。実際、アイデアか表現かの線引きは、非常に微妙なところがあります。

著作権の種類

著作権には、複製権、上演・演奏権、上映権、公衆送信権、口述権、展示権、頒布権、譲渡権、貸与権、翻訳・翻案権、二次的著作物の利用に関する権利(著作権法21条から28条)等があります。

イメージとしては、たくさんの権利の集合体が、「著作権」だと思ってください。

著作者は、これらの権利を独占するため、第三者が著作物を複製したり、変更したりすれば、そのような第三者の利用行為を差止めたり、第三者に対して損害賠償請求したりすることができることになります

反対にいえば、著作権として認められていない行為については、著作権法上、このような支配権は及ばないことになります。

他人のコンテンツの利用するときの注意点

現在、キュレーションサイトなどの他人のコンテンツを活用するサービスが多数ります。他人のコンテンツを適法に活用する方法について解説します。

他人のコンテンツを利用する行為について、著作権上の問題があるのは、他人の「著作物」について、複製・公衆送信等の上記の表の利用行為を行った場合です。

また、他人のコンテンツが著作物に該当する場合、複製・公衆送信等の利用行為に当たるかどうかを検討することになります

例えば、他人の著作物をコピーすれば「複製」に当たり、これをインターネット上で公開すれば「公衆送信」に当たります。

他方、例えば他のウェブサイトのリンクを掲載するのみであれば、閲覧者がリンク先から直接に情報を取得するため、複製や公衆送信には当たりません。

まず、他人のコンテンツが著作物に該当するのかを確認する必要があります。

利用する他人のコンテンツが著作物に当たらない場合、コンテンツの利用は著作権法上問題ありません。

例えば、他の企業の名称・営業時間等のデータを掲載する場合、このようなデータは創作的な表現ではないため、著作物には当たらず、著作権法上の保護は及びません。

注意を要するのは、仮にコンテンツが著作物に当たらず、著作権を侵害しないとしても、コンテンツを作成するため多大な費用や労力をかけている場合、コンテンツを用いて競合する事業を営むような場合には、コンテンツの作成者の利益(営業上の利益等)を侵害するものとして不法行為責任を負う可能性があります。

以上の検討により、第三者のコンテンツを活用することが著作物の利用に当たる場合、適法に第三者のコンテンツを活用するため以下の方法が必要となります。

  1. 権利者から許諾を得る
  2. 権利制限規定に基づいた利用をする

このうち(1)は、個別交渉により許諾を得るほか、著作権者が第三者による利用を自由に認めて公開している著作物を利用することになります。

(2)の権利制限規定とは、著作者の許諾を得ることなく著作物の複製等の利用をすることができる場合として、著作権法で例外的に認められた規定があります。

その内容は、以下のようなものがあります。

引用(32条1項)

多くの経営者が、「引用」であれば、著作物の利用が許されるというのは聞いたことがあると思います。

しかし、どのような場合が、「引用」として許されるのか、法律では規定されていません。

そこで、「引用」とは、どのような場合をいうのでしょうか?詳細は、YouTubeの「テキスト動画」は著作権の侵害になるのか【解説】をご参照ください。

特に重要な要素は以下の2点であるとされています。

  1. 明瞭区別性(引用する側と引用される側か明瞭に区別されること)
  2. 主従関係(引用する側か主であり、引用される側か従たる関係にあ ること)

WELQ騒動後、様々なキュレーションサイトの運営方法が注目されていますが、通常のキュレーションサイトは元のニュース記事等の「引用」に当たらないと考えられます。

なぜならば、キュレーションサイトの多くは、もとの記事をまとめただけであることが多く、仮にキュレーションサイトの運営者による論評が付されるとしても、多くの場合、引用される側か主であり、引用する側か従たる関係にあるからです。

著作権の契約実務上の注意点

著作権は、登録手続き等を要することなく当然に著作者に生じます。

金銭を支払って第三者に創作業務を委託した場合であっても変わりはなく、原則として創作を行った業務の受託者に著作権が生じることになるのです。

委託者に帰属させたいのであれば、受託者から委託者に著作権が移転する旨を合意する必要があります。

他方、受託者に著作権を帰属させたい場合、受託者が委託者に複製・翻案等の利用を許諾するという合意形式をとることになります。

著作権を委託者・受託者のどちらに帰属させるのかについては、その著作物の内容(流用の可能性の有無・委託者による利用目的)や、支払われる対価等を踏まえたビジネス判断になります。

著作権を委託者に帰属させるために、受託者から委託者に著作権を移転させる旨を契約書に規定するのであれば、具体的には、
本業務の成果物に関する著作権(27条及び28条の権利を含む。)は、納品と同時に受託者から委託者に移転する」などの規定を設けることになります。

著作者人格権について

また、著作者には、著作者人格権として、公表権(18条)、氏名表示権(19条)、同一性保持権(20条)が認められます。

これらは著作者の人格的利益を保護した権利であり、たとえ契約書で合意したとしても、著作者にのみ帰属し、著作者から第三者に移転することはできません。

そこで、受託者から委託者に著作権を移転させるのであれば、著作者人格権については、「行使しない」旨を定めておく必要があります。

YouTube動画でも、解説していますので、是非ご覧ください。

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