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ストックオプションの設計について
スタートアップやベンチャー企業については、ストックオプションを付与することがあります。
ストックオプションは、多額のお金は出せない企業にとって、人に働いてもらう動機づけにとっては、非常に有用なものです。
そこで、今回は、ストックオプションの設計について、解説していきます。
ストックオプションの発行手続と内容
ストックオプションですが、法律的には、新株予約権と言われているものです。
まず、ストックオプションの発行に際しては、以下のような手順を取ります。
- その「内容」を株主総会で決定
- 当該内容のストックオプションの募集および割当を株主総会または取締役会において決定
- 個々の対象者と付与契約書を締結
ストックオプションの「内容」
ストックオプションの「内容」については、以下のようなことを定める必要があります。
- 新株予約権の目的である株式(新株予約権の行使時に発行される株式を意味します)の種類および数
- 新株予約権を行使する際の払込金額(行使価額)
- 行使期間
- 行使の条件
- 取得の事由(発行会社が新株予約権を権利者から取得して消滅させることのできる事由)
- 新株予約権の譲渡制限
どういう内容にするのかが、非常に重要になるので、しっかりと対策をしていきましょう。
ストックオプション税制
ストックオプションを発行したとして、過大な税金が取られてしまうとなると、意味がありません。
そこで、税制適格ストックオプションとなるように設計することが通常です。
税制適格ストックオプションとは何かについては、専門的な話になりますし、企業経営者が細かく知っておく必要はありません。
ただ、専門家(弁護士・税理士)と話をするときに、このような制度があることを知っておく必要はあります。
税制適格となるための主な要件は、以下の通りです。
- ストックオプションを付与する人が、会社または子会社の取締役、執行役または使用人であり、大口株主(非上場会社の場合持株比率3分の1超)に該当しないこと
- ストックオプションを付与する契約において、以下の点が定められていること
- 付与決議の日後2年を経過した日から付与決議の日後10年を経過する日までに行使されるべき旨
- 年間の行使合計額が1、200万円を超えないこと
- 行使価額が、契約時の株式の価額以上であること
- 譲渡禁止
- 行使に基づく株式交付が会社法の規定に反しないで行われること
- 行使により交付される株式について振替口座簿への記載もしくは記録、保管委託または管理等信託がなされること
ストックオプションの行使価額
ストックオプションの内容として、ストックオプションを権利行使するときの1株あたりの払込金額(行使価額)を定める必要があります。
上述のとおり税制適格との関係で、無償で発行する新株予約権の行使価額は、ストックオプション付与契約時の会社の株式の価額以上とする必要があります。
ここは、専門である弁護士や税理士とよく協議することをお勧めします。ストックオプションした後に、税制適格を満たしていなかったとなると、大変なことになります。
行使価格の調整条項
新株予約権の内容として規定されるストックオプションの行使価額等について、将来的に増減させることができるための条項です。
例えば、株式の分割があった場合などについて、行使価額を変更できるとする規定です。
ストックオプションの行使期間
行使期間の設定について、法律上の制限はありません。
しかし、前述した税制適格要件の関係で、ストックオプションを行使できる期間は、ストックオプションの付与を決議した日から2年経過した日から、付与決議後10年を経過する日までの期間となるよう、ストックオプションの契約で制限を設ける必要があります。
ストックオプションの行使条件
ストックオプションは、経営陣や社員のモチベーション維持のために、発行されることが多いです。
よって、会社から退社した場合には、ストックオプションを行使できないようにしたいと思うのが通常かと思います。
そこで、権利行使の条件を定めることが可能であり、行使時に会社の役員、従業員等の身分であることを条件とすることが通例です。
また、株式公開までは行使できない旨や、懲戒事由などの不存在が定められることがあります。
ペスティング条項
ストックオプションの行使可能数について、従業員等の在籍期間等に応じて、段階的に引き上げる条項をぺスティング条項といいます。なるべく、会社に長く残ってもらうための方策です。
このようなベスティングの条件は、全対象者一律の内容としてもよいですし、対象者ごとに条件を異なるものにすることもできます。
ストックオプションを消滅させたい【取得条項】
会社側の判断で新株予約権を消滅させる手段として、新株予約権を会社がいったん「取得」して自己新株予約権としたうえで、株主総会・取締役会決議により消却するという手順が原則となります。
そこで、いかなる場合に、会社が新株予約権を「取得」できるか(取得事由)を、新株予約権の内容として定めることとなります。
例えば、会社が買収される側となる企業再編(合併、株式交換等)が承認可決されたこと等を定めるのが通例です。
ストックオプションは役員の「報酬」になる?
会社法上、役員に対するストックオプションとしての新株予約権の付与は、法律上の「報酬等」に含まれると解されています。
そこで、付与対象者に役員が含まれる場合、株主総会において報酬決議を得ることを忘れないようにすべきです。
新株予約権の「内容」を決議する株主総会において、予定される役員への付与数に応じて「新株予約権○個分の公正な評価額を上限とする」といった内容で報酬決議を得ておくのが通常の対応です。
ストックオプション発行後の変更
行使期間を延長するなどの、ストックオプションの発行後の内容変更は、原則として、変更内容についての株主総会の承認と、全権利者の同意を得ることが必要です。
ストックオプションは、専門的な知識が必要
以上のように、ストックオプションを発行するためには、専門的なことを決める必要があります。
また、適格税制など、受け取る金額に直結する制度もあります。ストックオプションを導入する際には、十分に注意するようにしましょう。