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株式分割をする必要性
スタートアップ企業やベンチャー企業において、資金調達は重要な課題です。
初期の段階では、エンジェル投資家などに出資してもらう場合に、株式を譲渡するということも、よくあることです。
しかし、当初の株式数が、少ない場合には、1株を与えてしまうと、投資家の持分割合が高くなってしまいます。
例えば、発行可能株式数100株,発行済株式数10株で会社を作ってしまった場合、1株あたりの持分割合は、10%となってしまいます。
このように、会社を創設時に発行する株式数を少なくしすぎたため、1株あたりの価値(金銭的な意味でも、持株比率的な意味でも)が高くなってしまい、株式分割を行いたいという相談をよく受けます。
そうなると、株式譲渡もできなくなってしまい、資金調達もできなくなってしまう事態が生じてしまいます。その時に、使われるのが、株式分割です。
今回は株式分割の手順を見ていきましょう。
株主総会で株式分割決議
株式分割を行うためには、株主総会(取締役会設置会社の場合は取締役会)で一定の事項を決議し(会社法183条2項)ます。
決議する事項は以下の通りです。
- 分割の比率と基準日
- 分割の効力発生日
- 分割する株式の種類
この決議は株式の種類ごとに行います。普通株式以外にも株式を発行している会社では、株式の種類ごとに分割の決議を行ういましょう。
また、株式分割によって発行済株式総数が発行可能株式総数を超えてしまう場合には、定款変更をして発行可能株式総数を増やしておきましょう。
基準日公告を行う
株式分割の決議が終わったら、基準日公告を行います(会社法124条3項)。
ただし、同項に「ただし、定款に当該基準日及び当該事項について定めがあるときは、この限りでない。」という但書があり、基準日公告が不要の場合もあります。
基準日公告が不要な場合
定款で株式分割の基準日を定めたうえで「本条の規定は前項の株式分割の効力発生日の翌日をもって削除するものとする。」といった規定もあわせて定款に設けると、株式分割が終了した後は自動的に基準日の規定も削除されるようにすることが可能です。
公告をするとなると、公告の申込み、掲載に余計な費用と時間がかかることから、公告を省略出来るよう定款に規定を設ける方がスムーズです。
1つ注意点として、平成27年に「当該定款の定めは、基準日の2週間前までに存在することが必要であると解するのが相当である。」という裁判例があります。
この見解に従うのであれば、定款で基準日を定めた場合でも定款変更から基準日まで2週間あける必要があります。
種類株式、新株予約権に関して注意すること
株式分割にあたり、すでに発行している種類株式や、新株予約権との関係にも注意する必要があります。
例えば、株式分割が、種類株式の内容である優先配当額や普通株式への転換比率などの調整事由に該当するケ-スが多い場合には注意が必要です。
最後に
株式分割を行った場合には、株式分割の効力発生日から2週間以内に登記を行う必要があります。こちらも忘れずに行うようにしましょう。