合意退職(退職合意書)で、企業が気を付けるべき法律問題【解説】

雇用・労務関係の法律

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自主退職・合意退職の実務とは

従業員が自ら退職をする自主退職と、会社と従業員が退職に合意する「合意退職」のポイントについて解説をしていきたいと思います。

自主退職の一般的な流れ

自主退職は、最も一般的な退職の形です。転職や家庭の事情、体調不良など理由はさまざまですが、従業員が自らの意思で会社を辞める形の退職が自主退職です。

この自主退職の場合には、従業員が上司や経営者に退職したいと伝え、退職願や退職届を会社に提出するという流れが一般的です。

会社としては、従業員の退職によって業務が停滞しないようにしっかりと引き継ぎをしてもらいたいと考えるかもしれません。

そのため、就業規則(就業規則がない場合には労働契約書)において、退職する場合には退職希望日の1か月前までに申し出ることを規定するなど、引き継ぎに必要な期間を設けることができるように備えておくことが必要です。

書面に残すことも重要

自主退職は従業員が自ら辞めるものですので、トラブルになる事例は多くありません。

それでも、会社が次の従業員を雇ったあとに退職予定の従業員がやはり辞めないと言い出してトラブルとなったり、退職日をめぐってもめたりしないようにするため、口頭のやりとりだけでなく、書面の退職届を必ず従業員本人から受け取ることが重要です。

従業員が自ら退職届を書いてくることもありますが、退職届には、自らの意思で退職することと退職日を明記することが必要です。

さらに、従業員本人の意思であることを明らかにするために、本人の署名と押印をしてもらうようにすることも忘れないようにしてください。

必要事項の記載漏れや署名押印忘れがないようにするためには、会社で退職届のフォームを作成しておき、そのフォームに記入してもらう方法を取るとよいでしょう。

また、就業規則や労働契約書に退職時および退職後の義務(引き継ぎを行なうことや秘密情報を持ち出したり利用したりしないことなど)を規定している場合は、確認事項として、フォームの中に退職時、退職後の義務を遵守することを約束することを加えておくと、従業環員本人の意識喚起に役立ちます。

なお、自主退職であっても、本人ではなく家族や代行業者から退職の連絡が入る場合があります。このような場合に注意しなければならないのは、本当に本人の意思であるのかを確認することです。

そのため、少なくとも、従業員本人が署名押印した退職届 (会社のフォームによるもの)を提出してもらうようにしてください。

合意退職の一般的な流れ

自主退職は従業員が自らの意思で退職するものであり、従業員のみの意思による退職の形ですが、合意退職はこれと異なり、従業員が退職することについて会社と従業員本人の双方が合意する形となります。

退職するという結果については自主退職と合意退職で異なることはありませんが、自主退職ではなく合意退職とすべき場合としては、退職勧奨による退職の場合や通常の自主退職とは異なる条件による退職(リストラによる退職や就業規則の規定とは異なる退職金を支給するような退職など)が挙げられます。

このような退職勧奨や通常とは異なる条件による退職の場合は、その退職の条件について合意し、それを書面に記載する必要があります。

そのため、双方が退職に合意する合意退職とし、退職合意書を作成することになります。

退職合意書には、従業員だけでなく会社も合意していることを示す必要がありますので、従業員と会社両方の署名押印や記名押印をすることになります。

従業員とトラブルになり、その解決として退職に合意した場合には、必ず書面で退職合意書を作成して、署名押印をもらうようにしてください。

口頭の合意だけで書面をつくらなかった例では、後になって「やっぱり辞めない」と主張されたり、「そもそも辞めるなんて言ってない」と言われ、紛争の蒸し返しになってしまう例もしばしばあります。

退職合意書に記載する事項

退職合意書に記載すべきポイントとしては、以下の通りです。

会社と従業員の合意により退職すること

従業員の退職が双方の合意に基づくものであり、解雇ではないことを明らかにする。

退職日

退職する日を明確にしておく。

特別退職金の金額と支給日

退職勧奨やリストラ等による退職により、通常とは異なる特別退職金を支給する場合は金額・支給日を記載する。

引き継ぎ業務の義務

退職までに引き継ぎ業務を行う義務を明記する。

秘密保持義務

退職条件について他の従業員等に口外しないようにする。

誹謗中傷をしないこと

退職後にネット等に会社を誹謗中傷する書き込みをしたりしないよう義務づける。

未払い賃金等の債務がないこと

すべてのトラブルが解決され、未払い賃金などの債務がないことを確認しておく。

退職の際には、最後まで手続きをちゃんとやる

以上のように、従業員が退職する際には、後から無用なトラブルが起きないように、会社としても対応する必要があります。

手続きはちゃんとするようにしましょう!

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