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リファラル採用・社会紹介制度を導入したい
採用難と言われている時代なので、従業員に新しい人の紹介をお願いする。そんな取り組みをしている企業が増えています。
そして、新しい人を採用した場合に、それを紹介した人に、紹介料を支払う制度を導入するところも増えています。
スタートアップ・ベンチャー企業では、人数も少ないため、組織の中での、1人の重要性が大企業に比べて高いです。
よって、どのような人を採用するかが重要であるため、信頼できる筋から従業員候補者を見つけたいというニーズは常にあります。そのため、社員紹介制度を採用することで、社内の事情をよく知っている社員が、会社に合うと思える人を積極的に推薦してくれるようになれば、会社にフィッ卜する人材を見つけやすいというメリットがあります。
職業安定法の規定
しかし、人材の紹介を受けたことに対して報酬を支払うことについては、職業安定法の規制がかかるため、注意が必要です。
職業安定法40条では、「労働者の募集を行う者は、その被用者で当該労働者の募集に従事するもの又は募集受託者に対し、報酬を与えてはならない。」と定められているため、会社が従業員に対して支払う紹介料が、職業安定法40条で供与が禁止されている「報酬」にあたらないかが問題となります。
なお、ここでいう「労働者の募集」とは「労働者を雇用しようとする者が、自ら又は他人に委託して、労働者となろうとする者に対し、その被用者となることを勧誘すること」を言います。
結論としては、社員紹介制度を採用することは、会社の業務として「社員に労働者の募集」をさせていると判断されるリスクがあります。
そして、新規採用者を紹介してくれた社員に紹介料を給料とは別に支払っていることが、職業安定法40条で供与が禁止される「報酬」を支払っていると判断されるリスクは否定できないと考えます。
なお、職業安定法40条違反については、6ヵ月以下の懲役または30万円以下の罰金が科される可能性があるので、注意が必要です。
賃金・給料として支払う
このように、社員に対して紹介料として報酬を支払うことは職業安定法40条で供与が禁止されている「報酬」の支払いに該当すると判断されるリスクがあるため、社員紹介制度を採用することが難しいようにも思えます。
しかし、法律では、「賃金、給料その他これらに準ずるものを支払う場合…を除き」と規定されています。
紹介料という形で支払うのではなく、人材の紹介という会社の業務を遂行したことに対する「賃金、給料その他これらに準ずるもの」として金銭を給付することも可能です。
また、例えば、ボーナスの査定に人材紹介の功績を大きく反映させる方法が考えられます。
なお、社員紹介制度を採用して、お金ではなく現物(例えばオフィス雑貨等)を支給するケースもあります。
しかし労働基準法24条1項では、「賃金は、通貨で支払わなければならない。」と規定されていることから「賃金、給料その他これらに準ずるもの」の支払いとして、現物を支給することはできません。
そのため、社員の紹介に対する報酬として現物を支給してしまうと、職業安定法40条で禁止される「労働者の募集」に対する「報酬」の支払いをしていると判断されるリスクがあります。
そのため、社員を紹介してもらったことへの報酬として現物を支給することはできないと考えられますので、この点には注意が必要です。
流行りのリファラル採用だからこそ、注意する
リファラル採用は、流行りの内容ですが、法律的には気を付けることが必要です。
会社としては、リファラル採用・社員採用制度を導入する際には、注意するようにしましょう。