業務委託契約書に記載する内容について【解説】【2020年7月加筆】

契約書解説

業務委託契約書」に記載する内容について、法的なポイントを解説していきます。
契約書の雛形も、以下のページからダウンロードできるようになっています!

契約書ダウンロードページ

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1)業務内容の特定

第●条(目的)
甲は、乙に対し、甲が行う業務のうち、次に掲げる業務を委託し (以下「本件業務」という)、乙はこれを受託する。

(1) ○○○○
(2) ○○○○

解説

業務委託契約で、よくトラブルになるのは、業務範囲です。発注者としては、あれもこれもやってもらえると思っていた、受注者としては、この料金だったらここまでしかできないなど、両者の思惑が異なるので、トラブルになるのです。

よって、業務委託契約を締結するときは、業務内容を特定するようにしましょう。

2)業務の遂行の内容

第●条(業務の遂行)

1 乙は、甲に適用される法令、通達および指針等を遵守し、善良なる管理者の注意をもって本件業務を遂行するものとする。
2 甲および乙は、次に掲げる事項について、必要がある場合には別途覚書にて定める。

(1) 本件業務の成果(以下「成果物」という)の納品に関する事項
(2) 成果物を納品する場合の引渡日、場所等に関する事項
(3) 作業時間および場所等に関する事項
(4) 作業の指示に関する事項
(5) その他甲乙が協議の上で定める事項

解説

受託者(乙)の視点

受託者は、法令等を遵守して本件業務を遂行することになります。本項目ではこの点を明記しましたが、記載されてなくても法令等の遵守は当然求められます。

本件業務について委託者からさまざまな指定がなされることがあります。しかし、実際に業務を行うのは受託者であるため、効率的かつ適正に業務を遂行するという観点から、受託者の意見を述べた上で本件業務の遂行方法を明確にすることが望ましいといえます。

本契約にすべて記載することも可能ですが、本契約までに定められない事項や、定める事項が多数にわたる場合には、覚書を締結してその中で詳細を定めることもあります。

委託者(甲)の視点

委託した本件業務の効果は最終的には委託者に生じることになります。したがって、委託者としては、受託者の便宜に配慮しつつも、委託者の利益を確保し、負担が課されないよう業務の遂行方法を定めることになります。

もっとも、委託者は受託者に比して事業規模が大きい場合が多く、業務分野や資本金等によっては、下請代金支払遅延等防止法(以下「下請法」といいます)の適用がされるケースが考えられます。

下請法では、支払遅延等について厳格な定めがあるほか、下請事業者の利益を不当に害することを禁止しているため、別途覚書を交わすときには、下請法に違反するような定めを置かないよう、留意が必要です。

3)再委託の内容

第●条(再委託)
乙は、本件業務を第三者(以下「再委託先」という)に委託する場合には、次に掲げる再委託先候補に関する事項を甲に通知し、本件業務を再委託することができる。

(1) 名称または商号、住所または本店所在地
(2) 再委託する業務の内容および範囲
(3) 乙と再委託先候補との取引実績
(4) その他甲が必要とする情報

解説

受託者(乙)の視点

業務委託の受託者であっても、受託業務の量が多い場合や、受託業務の一部についてより効率的に処理することができる企業と取引がある場合には、さらに他社に業務を委託することが有益です。受託者としては、原則として再委託ができるような規定とし、必要に応じて再委託により業務の効率化を図るように規定した方が有利です。

委託者(甲)の視点

これに対して、委託者側は、あくまで受託者の業務遂行能力等を信頼して業務を委託したものです。したがって、その受託者がさらに再委託をしてしまうと、受託者を信頼して業務委託をした意味が半減してしまいます。

そこで、委託者としては、再委託を行う際には、再委託先候補に関する情報を通知させてどのような会社であるのか把握できるようにした上で、委託者の承諾がないと再委託できないよう規定することが重要です。

また、再委託を行う場合であっても、受託者に再委託先と契約を締結させてこれを確認すること、再委託したことによって生じた損害等は受託者が責任を負うことも明示することが望ましいです。

委託者(甲)の視点で変更する場合

  • 乙は、本件業務を第三者(以下「再委託先」という)に委託する場合には、次に掲げる再委託先候補に関する事項を甲に通知し、甲の事前の書面による承諾を得た場合に限り、本件業務を再委託することができる。
  • 乙は、第1項により再委託先へ業務を委託する場合には、乙と業務委託契約またはこれに類する契約(以下「再委託契約」という。)を書面によって締結し、同書面を甲に提出しなければならない
  • 乙は、再委託先が本契約、法令、通達および指針等を遵守するよう監督するとともに、再委託先の行為により生じた責任につき、甲に対して一切の責任を負う

4)個人情報に関する規定

第●条(個人情報)

1 甲および乙は、本件業務の遂行過程において個人情報(個人情報の保護に関する法律(以下「個人情報保護法」という)第2条第1項に規定するものをいう)を取り扱う場合には、個人情報保護法、本契約および本件業務分野においてガイドライン等が定められている場合には当該ガイドライン等の定めを遵守し、本件業務の目的の範囲内において個人情報を取り扱うこととし、それ以外に取り扱ってはならない。

2 甲または乙は、個人情報が第三者に漏洩するおそれが生じたときは、直ちに相手方に報告した上で、拡大防止の措置を講じなければならない。

3 甲または乙は、相手方において個人情報が第三者に漏洩するおそれが生じたときは、相手方に対して漏洩の状況等に関する報告を求めることができる。

4 甲および乙は、次の各号に掲げる場合に限り、第三者に対して個人情報を提供することができる。

(1) 当該個人が個人情報の第三者への提供に同意し、書面による相手方の承諾を得た場合
(2) 当該個人の同意を得ることが困難であって、かつ、個人情報を提供しなければ、人の生命、身体または財産に重大な損害が生じるおそれがある場合
(3) 法令およびこれに準じる規定により個人情報の提供が求められた場合

解説

受託者(乙)の視点

業務委託を行う場合、個人情報を扱う業務が委託の対象となることも多く、委託業務の内容が個人情報そのものを扱わない場合であっても、委託業務に付随して従業員の情報や信用力に関する情報を扱うことで個人情報を伴うことが往々にしてあります。そのため、業務委託契約において個人情報の扱いを定めることは重要です。

受託者側としては、個人情報保護法に加え、各分野でガイドラインが定められていることがありますので、これを遵守することが求められます。本条ではその点を明示し、法令等の遵守の姿勢を明確に打ち出します。他方、個人情報の提供が許される場合もありますので、どのような場合に個人情報の提供が許されるかを明記することが望ましいといえます。

委託者(甲)の視点

委託者は、個人情報保護法により、受託者に対して、個人情報の安全管理が図られるよう必要かつ適切な監督を行わなければならないとされています。そのため、委託者としては、相手方において個人情報が漏洩するおそれが生じたときに報告を求める権限を付与するなどして、受託者への監督義務を果たすことができるよう定めることが望ましいです。

5)知的財産権などの権利帰属

第●条(権利の帰属)

成果物または本件業務の遂行過程で生じた発明、考案または創作について、特許権、実用新案権、意匠権、商標権当の知的財産権を受ける権利および同権利に基づいて取得される知的財産権は、甲に帰属する。

解説

業務委託については、委託者が受託者に、コンテンツの制作などを依頼する場合があります。その場合の著作権については、基本的には、手を動かした方に帰属するため、受託者に帰属します。

しかし、委託者からすると、自社が発注した仕事なので、成果物については、自社に著作権などの権利を持ちたいと思うはずです。

そこで、委託者としては上記の通り、知的財産権は委託者に帰属することを明確にしておく必要があるのです。

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