ジョイントベンチャーの契約で注意すべき6つのポイント【解説】【2019年12月加筆】

契約書解説

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ジョイントベンチャーをする際の注意点

事業が進んでくると、他企業とジョイントベンチャーをすることが出てきます。

ジョイントベンチャーとは、複数の企業が、資本を出し合い、一つの企業(合弁企業)を作ることです。

ここでは、複数の企業が集まることから、当然、各社の思惑も異なってきます。契約をする際には、気を付けるべきことも当然出てきます。

そこで、今回は、ジョイントベンチャーをする際の注意点を解説してきます。

ジョイントベンチャーの出資比率

ジョイントベンチャーを開始するにあたり、まず検討すべき事項は、双方がどのような比率で株式を持つのかです。

会社法上、原則として株主総会で過半数の賛成を得られれば決議できますので、出資比率が50%を超えると実質的に多くの事項を単独で決定できます

注意するべきなのは、双方の持分を50:50とする場合です。

一見平等のようでよいように思われるかもしれませんが、どちらも過半数を持っていない場合、両者の意見が対立すると意思決定ができません。したがって、双方が譲らず50:50となってしまった場合には、意思決定ができない可能性があります。

一方の会社が、過半数を握る場合には、他方の会社は、意思が決定できない可能性があります。そこで、重要な事項につき拒否権を定める必要があります。

ジョイントベンチャーの取締役構成など

役員構成

ジョイントベンチャーには、役員の選任に関する事項も、重要な事項です。

取締役は、会社の業務執行を行う機関ですので、それぞれの会社が、どの程度、取締役を送り込めるかは大事な要素になっていきます。

取締役の構成比をどうするかについて決まりはありませんが、たとえば出資比率がA社60:B社40であれば、A社からは3名、B社からは2名選任となるケースが多く見られます。このようなケースでは、B社の側は役員の過半数を取れていないため、実質的にはA社の判断で会社運営が進められてしまいます。

そこで、自社から送り込む取締役が少数派となってしまう場合は、重要な事項については取締役の全員一致とすることや、後で述べる拒否権の対象事項とするよう交渉することが考えられます

そのようにして少数派であっても一定の事項にはコントロールを及ぼすことが可能になります。

また、言うまでもないことですが、企業にとって代表取締役は最も重要なポジションです。合弁当事者のうち、どちらが指名するかという点については、なにも定めなければ過半数の取締役を送り込んだ側か多数決で自社側の取締役を代表取締役に選任することになります。したがって、それと異なる定めをする場合はジョイントベンチャー契約に規定しておくことが必要になります。

少数派株主の拒否権をどうするか

出資比率や役員構成で少数派となる側にとって重要な事項が「拒否権」です。

前述のとおり、多数派は株主総会や取締役会で多数決で合弁会社の意思決定を行えるメリットを有していますが、多数派のみの意思決定で運営されるのでは、双方にとってジョイントベンチャーを設立するメリットがありません。

したがって、少数派もジョイントベンチャーの運営に関わる機会を確保しておく必要があります。

自社が少数派株主である場合は、一定の重要な事項については、少数派株主の事前承認を要する規定を設けることや、多数派株主のみの賛成では決議できないよう決議要件を加重することを要求していくことが重要になります。

たとえば、定款変更やM&A、増資等、会社の重要な意思決定に関わる事項は拒否権の対象にすべきです。

ジョイントベンチャーの解消に関する規定

ジョイントベンチャー事業を始めるときは、解消ありきで考える人はいません。

ジョイントベンチャーが事業を行っていくうちに、方向性の違いから仲違いすることもあります。このようなときに、合弁当事者ができるだけ揉めずに関係を解消するためにも、あらかじめ解消する際の取り決めをしておくことは非常に重要です。

株式の譲渡に関する規定

双方が、関係を解消したいと考える場合には、合意のうえ解散をすればよいのであまり揉めることは想定できません。

しかし、一方当事者のみが解消したいと考えている場合は問題となります。

解消の方法としてまず考えられるのが、解消を希望する当事者が自己の株式を譲渡することです。

この点、ジョイントベンチャーの契約には、相手方の事前承諾がない限り、一切株式の譲渡を認めないとしているケースも多く、この場合は、一方の意思だけでは抜けられません。

この場合、買取りの際の算定方法を定めておくことが重要です。そこで、一方当事者が抜ける場合には他方当事者が優先して買い取れる権利を定めることも考えられます。

これにより残存当事者が自らの望まない第三者と事業を行うことを防ぎつつ、一方当事者の投下資本回収の道も残すことができます。

デッドロックの場合の規定

ジョイントベンチャー事業の場面において考えてみると、両者の意見が対立して物事が決定できず前に進めなくなってしまう事態が生じます。

ジョイントベンチャー契約におけるデッドロック条項とは、「ある一定の事項について合意できず前に進めなくなってしまった場合、どちらかが株式を手放すか、解散する」という内容を定めておくものです。

ただし、デッドロックの解消は、会社の解散などにもつながるので、特に重要な事項についての不一致に限定したり、一定期間誠実に協議を行いそれでも合意に至らない場合に限定するなど、あくまでも最終手段とした方がよいと思います。

解散請求権の規定

ジョイントベンチャーが債務超過に陥った場合や、連続して営業損失を計上したとき等には解散を請求できる旨を定めることがあります。

この請求がなされた場合、他方当事者も解散に同意してくれる場合は問題ありませんが、他方当事者はまだ事業を継続したいと考えるケースもあるので、その場合は他方当事者が解散を請求した当事者の株式を買い取る旨を定めておくことが考えられます。

このとき、株式の買取価格については別途協議するなどと定めているケースもありますが、価格についての合意が得られずに譲渡できないことも想定されますので、できれば初めにきちんと決めておいたほうが安全です。

競業避止義務

当事者の競業避止義務についても定める例が多くみられます。合弁会社の運営中はその利益を奪い合うような事業をされては困ると考えるのは合理的です。

したがって、条項を規定すること自体はそれほど抵抗なく受け入れられるものの、他方で自社のビジネスを制限することにもなるため、その範囲や期間、適用される地域等について慎重に検討する必要があります。

まとめ

ジョイントベンチャーはうまくいけば双方のリソースを効率的に組み合わせて、一企業ではできないような事業を成し遂げることができます。

しかし、他の企業と組むときは、うまくいかなかったときの対処法も考えておかなければなりませんので、解消時のことについても検討しておく必要があります。

解消の規定は、慎重に検討するようにしましょう。

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