スタートアップ・ベンチャー企業が国際取引をする際の契約で気をつけるべきこと

契約書解説

komon5000

国際取引での契約で注意するべき点は、どこにあるか?

近年、経済活動もグローバル化していて、スタートアップ・ベンチャー企業も、海外企業と取引することが多くなってきました。このような国際取引に関する契約は、国内での取引とは異なる考慮が必要です。

そこで、今回は、国際契約で注意するべき点について、解説していきます。

契約内容を明確化する

国内取引においては、契約書に定められていない事項は、日本法に基づいて解決されることになります。

日本法へのアクセスが容易なので、当事者が協議しながら契約内容を明確化していくことが期待できます。

このため、国内取引の契約書に中では「誠実協議条項」といった、紛争が生じた場合や、契約に疑義がある場合には当事者間の協議で解決するといった、ふわっとした条項を置いても、そんなに困ることはありません。

しかし、国際取引においては、商習慣、文化、社会通念等の相違があることから、契約に対する当事者間の認識に大きな違いがあります。

このような商習慣、文化、社会通念等から生まれた認識の相違を解決することは困難です。

そのため、国内取引以上に、契約内容を明確化して紛争の発生を防止する必要があります。

このような理由により、国際取引に関する契約は、条項も多く、非常に長文になるのです。

国際取引の準拠法について

国内の取引では、当たり前ですが、日本の法令に基づいて契約が解釈・適用されます。

しかし、海外企業との取引では、契約を解釈・適用するために参照される法令(準拠法)が日本法であるとは限りません。

外国法が準拠法となる場合、契約の解釈について紛争が生じ、これを法律に従って解決するためには、外国法を調査しなければなりません。

また、現地の法律事務所に依頼した場合には、その費用も時間も大きな負担ですし、現地の弁護士との協議については、負担になることも多いでしょう。

国際取引においては、これを踏まえた対策が必要になります。

例えば、準拠法は、当事者間の合意で定められるため、日本法を準拠法とするように契約交渉を行うことが考えられます。

ただし、いずれも自国を準拠法としたいはずであり、当事者間の利害対立が明らかな部分です。

そのため、スタートアップの場合、通常、契約の交渉力が強くなく、準拠法を妥協しなければならないことが多いのが実情です。

準拠法が外国法になる場合には、生じ得る様々なケースについて、契約条件を明確に定め、契約の解釈について疑義を残さないようにし、紛争の予防を図ることが重要です。

契約においてルールを明確に定めておけば、法律よりも、契約条件が優先して適用されることが通常なので、契約条項は、しっかりと明確化しておきましょう。

なお、準拠法に関する合意がない場合には、国際私法というルールによって、準拠法が指定されることになります。

ただし、国際私法によっても準拠法は明確ではないことがあり、紛争が生じた場合の予測が困難になるし、当事者間の紛争解決も難しくなります。そのため、国際取引においては、合意により準拠法を明確化しておくべきです。

紛争解決手段(国際裁判管轄・仲裁・執行)

紛争が生じた場合に、当事者間で紛争が解決できればよいですが、当事者間で解決できない場合があります。

契約において、当事者間で解決できない紛争について、どのような手続きで解決するのかを定めることになります。

国際取引に係る紛争の解決手段としては、裁判と仲裁があります。

裁判は、裁判所で審理の上、裁判所の判決に基づいて執行する方法です。裁判で解決することとする場合、どこの国の裁判所に訴えを提起するかを定めます。

仲裁は、当事者が紛争の解決を、第三者である仲裁人の判断に委ね、その判断に基づいて執行する手続きです。

ここで注意するべきであるのは、仮に、苦労して日本の裁判所で判決を得たとしても、外国で執行することができるとは限らないという点です。

日本の判決を外国で執行できるかどうかは、国ごとに異なるため、日本の裁判所で判決を得ても執行できないことがあります。例えば、中国やロシアでは日本の判決を執行することはできません

仲裁は、ニューヨーク条約に加盟する国間では執行が可能です。訴訟よりも迅速な解決が期待できることもあり、国際取引では仲裁で解決する旨が定められることが多いです。

仲裁のデメリットとしては、仲裁人の報酬等も当事者が負担することになるため、コストが高くつく点にあります。

一般論としては、上記のような紛争解決手段を採用することになりますが、スタートアップ・ベンチャー企業において、このような手段により解決することは費用面から負担が大きすぎ、現実的ではありません。

そのため、やはり契約の内容を明確化すること、信頼できる取引相手であるのかを調査することにより、紛争を予防するという観点が国内取引以上に重要になります。

komon5000