【解説】契約書に決まった様式はあるのか【タイトル・印鑑・印紙税】

契約書解説

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契約書に印鑑って、必要?

契約書」というと、固いイメージがあります。しかし、契約書の形式は、特に法律で決まっていません。

もっといえば、契約書がなくとも、契約書に押印がなくとも、当事者間の合意さえあれば、契約は成立します。

このため、電子メールやFAXでのやり取りであっても、口頭であっても契約自体は成立するのです。

もっとも、実際に紛争があった場合には、例えば「口頭で契約が成立しました」と主張しても、相手方が認めないリスクが高いため、何らかの方法で書面化しておくことが必要です。

このように契約書のスタイルには特にルールがないため、後から記載の内容がわかるような形式で作成されていれば、基本的には、法律上の効力が否定されることはないです。

ただし、通常の契約は、署名や記名・押印をするなどの一定の形式を整えてされるため、一定の形式を整えていないのであれば、本当に契約書が適切に締結されたのか、疑問が生じてしまう可能性もあります。

特に、契約書が役立つのは紛争が生じた場面であるため、契約書を使う際には、相手方は相手方にとって都合のよい主張しかしない可能性が高いです。

また、IPOやM&Aでのデューデリジェンス時には、適切に作成されたものであるのかを第三者からチェックされることになります。

このため、一般的な契約書の形式を知っておくのは、重要です。

契約書のタイトル

契約書とは、当事者間の合意を示した文書で、その夕イトルに決まりはありません。

覚書、合意書などのタイトルであっても、効力は同じなので、一般的な契約書と同様の重要性を有するものであることを認識しておく必要があります。

署名と記名押印

契約書を作成する場合は、契約を締結する権限がある者が署名又は記名押印します。

「署名」は、直筆で氏名を記載することをいい、「記名押印」は、直筆以外の方法(ワープロソフトやゴム印など)で氏名を記載して印鑑を押すことをいう。

せっかく、契約書を作成しても、相手方が「私はその契約書を作成していない」などと主張されてしまう場合があり得ます。

これを防ぐために、署名または記名押印がされるのです。

実印と認印

印鑑には、実印認印があります。

実印は、印鑑登録がされた印鑑であり、認印は、印鑑登録がされていない印鑑です。

契約書に押された印鑑が実印であろうとも、認印であろうとも、契約書の形式として問題はありません。

ただし、認印である場合には、会社とは全く関係がない印鑑が押されている可能性も否定できません。「私の印鑑ではないから、その契約書を作成したのは私ではない」という反論を許す可能性もあります。

そこで、重要な契約については、実印で押印することとし、その印鑑証明書の提示を求めておくとよいでしょう。

契約の締結権限

会社の契約においては、会社に代わり、代表者が押印することになります。

代表取締役は、会社の代表機関であるため、代表取締役の署名又は記名押印があれば、特に問題はありません。

しかし、契約書に署名又は記名押印する者が、「代表取締役」ではなく、「営業部長」「支店長」等である場合があります。このような場合には、その者が会社の代理権を有していない可能性があります。

代理権がない者と契約をした場合、原則として、その契約の効力は、会社に帰属しない可能性があります。

そのため、契約書の名義人が誰であるのかについては、注意が必要です。

「営業部長」や「支店長」等とされた者との間で、その事業や支店に関する契約を締結する場合は、会社に帰属します。

契約書と印紙

契約書を文書で作成する場合、契約書の種類によっては印紙を貼付する必要があります。

貼付するべき印紙額は、契約の内容により異なります。

例えば、業務委託契約が「請負に関する契約」に該当する場合、印紙を貼付するべきこととなるが、業務委託契約が委任に関する契約である場合には、印紙を貼付する義務はありません

また、業務委託契約が請負に関するものであったとしても、「継続する複数の取引の基本的な取引条件を定めるもの」である場合には、「請負に関する契約」とは印紙代が異なることになります。

印紙を貼り忘れた場合でも、契約書の効力が否定されるわけではありません。

しかし、税務調査により発覚した場合、納付しなかった印紙税の3倍の金額を納付しなければならないことになるので、注意してください。

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