従業員を雇用する際に気をつける「労働契約」と「就業規則」【2020年7月】

もめる法律相談

会社を起業して、それなりに事業も発展していくと、自分一人でやれることには限界があります。そこで、従業員を雇うことを考えると思います。

しかし、従業員を雇うということは、さまざまな制約も出てくるのも事実です。そこで、ここでは、初めて従業員を雇うときの注意点を見ていきます。

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労働契約の締結

従業員を雇う際には、面接等のプロセスを経て、採用する人を決定することになります。そして、いざ雇う人を決定したら、労働条件を明示して、労働契約を結ぶことが必要です。

さらに、特に重要な次の6項目については、口約束だけではなく、きちんと書面を交付する必要があるのです。

  1. 労働契約の期間はいつまでか
  2. 期間の定めがある契約の更新についての規定
  3. 仕事をする場所、仕事の内容
  4. 始業時間、終了時間、残業の有無、休憩時間、休日・休暇、交替制勤務場合のローテーション
  5. 賃金の決定、計算と支払いの方法、締切りと支払いの時期
  6. 退職に関する規定(解雇の事由を含む)

労働契約の禁止事項

事業者と労働者は、雇用契約という契約関係によって規定されます。契約であれば、お互いの合意があれば何を定めてもいいかというと、労働基準法上、一定の制約があります。

労働基準法では、労働者が不当に会社に拘束されることのないように、労働契約を結ぶときに、会社が契約に盛り込んではならないことも定められています。例えば、以下のような条項です。

  • 労働者が労働契約に違反した場合に違約金を支払わせることや、その額を予め決めておくこと。(これはあらかじめ賠償額について定めておくことを禁止するもので、労働者が故意や不注意で、現実に会社に損害を与えてしまった場合に損害賠償請求を免れるというわけではない)
  • 労働することを条件として労働者にお金を前貸しし、毎月の給料から一方的に天引きする形で返済させること
  • 労働者に強制的に会社にお金を積み立てさせること

このような労働条件を定めてしまうと、6カ月以下の懲役または30万円以下の罰金という刑事罰が科されてしまう可能性があります。十分注意することが必要です。

また、労働基準法では、以下の3つを禁止しています。

  1. 業務上災害のため療養中の期間とその後の30日間の解雇
  2. 産前産後の休業期間とその後の30日間の解雇
  3. 労働基準監督署に申告したことを理由とする解雇

採用の内定を出すときには慎重に

人を雇うときに、まずは「内定」を出します。しかし、その場では内定を出していても、日々経営状況が変わるのが、スタートアップ企業です。内定を出していても、やはり雇えなくなったという場合もあると思います。

しかし、一度採用を「内定」してしまうと、採用内定の取り消しは解雇にあたるとされています。したがって、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上認められない場合は、採用内定取り消しは無効となります。

内定取り消しが認められる場合には、通常の解雇と同様に、使用者は解雇予告など解雇手続きを適正に行う必要があります。採用内定者が内定取り消しの理由について証明書を請求した場合には、速やかにこれを交付する必要があります。

就業規則の作成

常時10人以上の労働者を雇用している会社は必ず就業規則を作成し、労働基準監督署長に届け出なければなりません。

スタートアップ企業は、成長速度が速く、気がついたら従業員が10人以上になっていたということも珍しくありません。就業規則に必ず記載しなければならない事項は以下のようなものです。

  • 始業及び終業の時刻、休憩時間、休日、休暇、交替制勤務の場合の就業時転換に関する事項
  • 賃金に関する事項
  • 退職に関する事項

また、就業規則の作成・変更をする際には必ず労働者側の意見を聴かなければなりません。

労働保険と社会保険

事業主は、人を1人でも雇う場合には労働保険に加入しなくてはならず、さらに法人事業所、または常時5人以上を雇用する個人事業所は社会保険に加入しなくてはなりません。

労働保険と社会保険について、具体的な手続きなどの説明は長くなるので割愛しますが、これも事業者としては覚えておかなければならない事項です。

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