スクレイピングで他社のデータを取得するのは法律的に問題がないのか?【解説】

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スクレイピングとは

スクレイピングとは、特定のウェブサイトから、ウェブページのHTMLデータを取得して、取得したデータの中から、特定のトピックに関わるデータを抽出、整形しなおすことをいいます。

このようなスクレイピングですが、情報収集の方法としては、短時間で大量の情報を取得することができるので、非常に有用です。

最近では、多くの事業者が、スクレイピングを活用している(検討している)ところですが、スクレイピングは、他社の情報を取得することになり、法律的にどうなのかという相談が多くきます。

そこで、今回は、ウェブサイトの情報をスクレイピングして、情報を収集する行為についての法律的な解説をしていきます。

スクレイピングは著作権に違反するのか

スクレイピングについは、ウェブサイト等から、情報を取得することになります。

そうなると、他人のコンテンツをコピーすることになるため、他人の著作権を侵害しているかどうかが問題となります。

法律上は、他人のコンテンツついて「著作物」として、著作権法上、保護されています。

そして、そのようなコンテンツをコピーしたり、自社側のサーバに保存する行為は、著作権者の同意がない限りは、著作権侵害になるため、禁止をされています。

著作権法の例外「情報解析のための複製」

しかし、上記の規定には例外があります。著作権法には、著作権者の同意なく、コピー等ができる場合が規定されているのです。

例えば、自分だけで楽しむ「私的利用」などは、その一例です。

そして、著作権法では、情報解析のための複製等も、その例外規定としているのです(著作権法47条の7)。情報解析とは、以下のような行為をすることをいいます。

コンピュータによる情報解析を行うことを目的する場合で記録媒体への記録又は翻案

翻案とは、元々のコンテンツに、新たな創作的表現を加えることをいいます。

以上の例外規定からすると、自社のデータベースを作成するに当たって、スクレイピングをした結果を、記録媒体への記録を行うことは、著作権法上は、OKということになります。。

スクレイピングが法的にNGな場合

以上が、著作権法上、スクレイピングが許される場合ですが、以下のような場合には、スクレイピングは許されないことになります。

NG例1:情報解析以外の場合

上記で解説した情報解析目的ですが、これ以外の目的で、他者のウェブサイトをスクレイピングすることは、著作権法上違法となります。

NG例2:スクレイピングした結果の譲渡

スクレイピングが許されるのは、情報解析目的で、その結果を自社で記録、またそれを基に自社でカスタマイズすることです。

よって、スクレイピングによって、収集されたコンテンツを、そのまま他人に譲渡する行為は、著作権法上、違反です。

NG例3:ウェブサイトの利用規約に違反する場合

著作権法上はOKでも、ウェブサイト上の利用規約で、「スクレイピング禁止」と記載されている場合には、問題が生じます。

利用規約は、ユーザーとの契約になるものですので、ここに「スクレイピング禁止」と記載されているにも関わらず、スクレイピングをしてしまったら、利用規約違反、契約違反になるのです。

契約違反ということは、ウェブサイトの管理者から損害賠償請求などがされる可能性があります。

ただし、利用規約がユーザとの間で効力を生じさせるためには、以下の措置が必要になります。

  • 利用規約をユーザに示し
  • 取引の開始に当たり、同意クリックをさせる

ここで、大事になってくるのは、利用規約に同意後のコンテンツには、利用規約に「スクレイピング禁止」を記載されていたら、利用規約違反になりますが、利用規約に同意させることなく、誰でも見られるコンテンツを、スクレイピングする場合には、上記利用規約違反は、問題になりません。

NG例4:ウェブサイトがアクセス制限をしている場合

例えば、スクレイピング対象のウェブサイトが、クローラのウェブサイトのアクセスを制限するための措置をとっているような場合、そのような措置を破って、クローリングすると、民法上の不法行為に該当する可能性があります。

刑事事件に発展する場合も

今までは、民事上の責任を解説してきましたが、スクレイピングの態様によっては、刑事事件になる可能性もあります

通常のスクレイピングでは、ウェブサイトの更新頻度に合わせて情報をアップデートしていくために、定期的にクローリングしていくのが通常です。

そのため、一定の間隔で当該ウェブサイトにアクセスすることになりますが、その際に、スクレイピングによって当該サイトのサーバにかかる負荷が重くなり、正常なサイト運営を妨げた場合には、当該サイト事業者の業務を妨害したとして偽計業務妨害罪が成立する可能性があります(刑法233条)。

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