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どういう場合に解雇できるのか?
従業員を雇ってみたら、実際は期待していたほどの能力はなかったという場合もあると思います。特に企業を設立して間もない場合には、優秀な人が採用できる可能性はそれほど高くはありません。一方、雇った従業員が期待外れだからといって解雇できるかというと、解雇は、使用者がいつでも自由に行える手段ではありません。
労働契約法では、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、解雇が無効であるとしています(労働契約法第16条)。解雇するには「客観的合理的理由」と「社会的相当性」が必要になります。
例えば、解雇の理由として、勤務態度に問題がある、業務命令や職務規律に違反するなど労働者側に落ち度がある場合が考えられますが、1回の失敗ですぐに解雇が認められるということはなく、労働者の落ち度の程度や行為の内容、それによって会社が被った損害の重大性、労働者が悪意や故意でやったのか、やむを得ない事情があるかなど、さまざまな事情が考慮されて、解雇が正当かどうか、最終的には裁判において判断されます。
また、次の場合については法律で解雇が禁止されています。
労働基準法
- 業務上災害のため療養中の期間とその後の30日間の解雇
- 産前産後の休業期間とその後の30日間の解雇
- 労働基準監督署に申告したことを理由とする解雇
労働組合法
- 労働組合の組合員であることなどを理由とする解雇
男女雇用機会均等法
- 労働者の性別を理由とする解雇
- 女性労働者が結婚・妊娠・出産・産前産後の休業をしたことなどを理由とする解雇
育児・介護休業法
- 労働者が育児・介護休業などを申し出たこと、または育児・介護休業などをしたことを理由とする解雇
さらに、使用者は、就業規則に解雇事由を記載しておかなければなりません。
そして、合理的な理由があっても、解雇を行う際には少なくとも30日前に解雇の予告をする必要があります。
予告を行わない場合には、30日分以上の平均賃金(解雇予告手当)を支払わなければなりません。予告の日数が30日に満たない場合には、その不足日数分の平均賃金を、解雇予告手当として、支払う必要があります。さらに、労働者が解雇の理由について証明書を請求した場合には、会社はすぐに労働者に証明書を交付しなければなりません。
整理解雇について
企業を経営していると、良いときもあれば悪いときもあります。そして、悪いときには、従業員に支払う給料などが重くのしかかります。泣く泣く従業員に辞めてもらわなければならないケースがあるかもしれません。
このような会社の不況や経営不振などの理由により解雇せざるを得ない場合、人員削減のために行う解雇を整理解雇といいます。これは使用者側の事情による解雇ですから、次の事項に照らして整理解雇が有効かどうか厳しく判断されます。
(1)人員削減の必要性
人員削減措置の実施が不況、経営不振などによる企業経営上の十分な必要性に基づいていること
(2)解雇回避の努力
配置転換、希望退職者の募集など他の手段によって解雇回避のために努力したこと
(3)人選の合理性
整理解雇の対象者を決める基準が客観的、合理的で、その運用も公正であること
(4)解雇手続の妥当性
労働組合または労働者に対して、解雇の必要性とその時期、規模・方法について納得を得るために説明を行うこと
このように、一度従業員を雇うと、事業者は簡単に辞めさせることはできず、法律的にも社会的にも大きい社会的責任を負います。
従業員を雇う際には、慎重に採用することが大切です。