役員報酬を決定には「株主総会で決議」が必要!役員報酬の注意点【解説】

もめる法律相談

komon5000

役員報酬って、どうやって決めるの?

スタートアップやベンチャー企業にとって、役員報酬の決め方は、悩みどころです。

創業者や創業メンバー、新しく取締役になった者の役員報酬について、どのように決めればよいのでしょうか。

もちろん、会社の財産的な制限や人間関係によっても異なるので、答えはありません。そこで、今回は、法律的な観点から、役員報酬について、解説していきます。

役員報酬について

そもそも、取締役などの役員報酬は、株主総会で決議する必要があります。

たまに、この決議をしないまま取締役に報酬を支払い、後から「どうしましょう…」と相談されるケ-スがあります。

株主が、創業者や創業メンバーだけあれば、当時にさかのぼって、株主総会議事録を作成して、決議があったことにすることも可能だと思うので、きちんと、株主総会決議をするようにしましょう。

株主総会決議なく、役員報酬を支払っていると、IPOの審査などで、問題視されることがあるので、注意しましょう。

役員報酬、どこまで決めればよいのか。

役員報酬を株主総会で決定する必要があるとして、どこまで決めればよいのでしょうか。

報酬についての株主総会決議は、その総額(総支給金額)を決定するとされています。必ずしも、個々の取締役の報酬金額の決議までは、必要ないとされています。

これは、会社法が取締役の報酬を株主総会の決議事項としている趣旨は、取締役によるお手盛り(取締役が自分で自分に対して高額の報酬を与え、会社の財産を毀損すること)を防止する点にあり、総額を決議していればその趣旨は達成されると考えられることによります。

したがって、株主に、取締役の個別の報酬を知られたくない場合や、あらかじめ多めに株主総会で報酬を決議しておき会社の業績に応じて臨機応変に報酬額を変動させたい場合などには、株主総会では報酬の総額のみを決議しておき、報酬の具体的な配分は取締役会に一任する決議を行うことも可能です。

法律上、役員に対して発行されるストックオプション役員報酬です。

ストックオプションを発行する場合には、ストックオプションの発行の株主総会決議が必要ですが、それとは別に、報酬決議も併せて行う必要がああります。

ストックオプションを発行する際に株主総会を行う場合には、その総会でまとめて報酬決議を行ってしまえばよいのですが、あらかじめ株主総会でストックオプションの数の上限を決議しておき、具体的な発行は取締役会に委任しているようなケースでは、取締役会の決議だけでストックオプションを発行できると思っていたら、実は報酬決議との関係で株主総会も必要だったというケースがありますので、注意が必要です。

監査役の報酬って、どうやって決めるの?

監査役の報酬は、定款または株主総会の決議によって定める必要があります。

取締役会の報酬は、前述のとおり、株主総会で取締役の報酬の上限を決めて、個別の報酬額の決定は取締役会に委任することができます。

しかし、監査役は、取締役を監査する立場にあるので、取締役会で個々の報酬を決められてしまうと、この監査が、機能しなくなくなってしまう恐れがあります。

そのため、個別の監査役の報酬の額は、監査役自身の協議により決めることとなっています。株主総会において監査役報酬の上限額を決定する際には、注意が必要です。

役員報酬の減額をする場合

役員として働いてもらい、報酬に見合った成果を出していない場合、役員報酬を減額したいと思うかもしれません。

上記のように、役員報酬は、株主総会で決定するので、減額する場合も、株主総会決定すればよいのではと思うかもしれません。

しかし、判例では、役員報酬の金額が具体的に定められている場合、その額は取締役と会社の間の契約内容となることから、その後に職務内容に著しい変更があったとしても、本人の同意がない限り株主総会決議を行っても報酬を減額することはできないとされています。

よって、一度決めた報酬を、役員の任期中に、本人の同意なく減額することは困難なのです。そのことも踏まえて、当初の役員報酬を定める必要があります。

komon5000