会社を設立するにあたって検討すべき2つのポイント【解説】

スタートアップ・ベンチャー企業の設立時に必要な法律

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会社設立にあたり検討すべきポイント

株式会社を設立する際には、会社法に従い粛々と必要書類を作成して手続を進めていきます。

その手続きで各種書類を作成する際に、事前に検討すべきポイントは多岐にわたりますが、特に以下の2点は特に注意を払うべきです。

  1. 会社の組織をどうするのか
  2. 資本金はいくらにするか

そこで、まず設立の段階で検討すべきポイントについて解説したうえで、会社設立の手続の流れについて説明をします。

① 会社の組織構成をどうするのか

会社を設立するにあたりまず検討すべきなのが、会社組織をどのような構成にするかという点です。

会社法上で設けることのできる組織は、取締役・取締役会・監査役・監査役会・会計参与・会計監査人・監査等委員会などいくつかあります。

しかし取締役会を設置する場合には、原則として監査役を置かなければならないなど、ある組織を設ける場合には他の組織を監査役として置かなければならないという会社法上の制約があるので、組織設計をする際には注意をしなければなりません。

また、監査役の代わりに会計参与を置くことも認められていますが、これはあまり利用される例が少ないため、会計参与については除外して説明していきます。

ベンチャーの設立段階では、各種手続を簡易的に行えるようシンプルな組織設計をするほうがよい考えられるため、それほど重い組織にする必要はありません。

そのため、ベンチャーの設立の際には、株主総会と取締役のみとする場合や、株主総会+取締役会+監査役という組織設計とする場合が多く見られます。

設立時に、株主総会十取締役のみの組織設計と取締役会を設置するのとどちらがよいのか,というのはケースバイケースの判断が必要となるため、どちらがよいというのは一概に言えません。

そこで、取締役会設置会社とする場合のメリットとデメリットを説明していきますので、どちらの組織設計にすべきか迷った場合の参考にしていただきたいと思います。

取締役会設置会社とすることのメリット

株主総会の決議事項のうち、一定事項を取締役会において決議できることがメリットとして挙げられます。

例えば、以下のようなことが出来るようになります。

  • 株式分割を取締役会の決議(会社法183条2項)
  • 取締役会での株式の発行の際の割当事項の決定を決議(会社法204条2項)
  • 取締役の競業取引や利益相反取引を取締役会の決議で承認(会社法365条1項,356条1項)

のため多数の株主がいる場合は株主総会をいちいち開かずとも、取締役会のみで意思決定することができるという点で、取締役会を設置したほうが便利であると想定されます。

次に、取締役会設置会社とする場合には、株主提案権を行使できる株主を限定することが可能となります。

株主提案権というのは株主が会社に対して、一定の事項を株主総会の目的とすることを請求することができる権利のことです。

取締役会非設置会社の場合には、全ての株主が株主提案権を行使可能(会社法303条1項)となります。

取締役会設置会社の場合には、総株主の議決権の100分の1以上の議決権、または300個(これを下回る数を定款で定めた場合はその数)以上の議決権を6ヵ月前から引き続き有する株主に限定されます。

このことから、株主の株主総会のコントロールカを取締役会設置会社とするほうが制限することが可能です。

取締役会設置会社とすることのデメリット

上記のようなメリットもありますが、取締役会設置会社としないほうがよい場合もあります。

まず、3人以上の取締役で取締役会は構成されるため、監査役とあわせて役員を少なくとも4人は確保する必要があります。

監査役や取締役は、会社や第三者に対する責任を負わなければならないため、このような対外的な責任を負っても構わないという人材を探すことが取締役会を設置するための関門となります。

次に、取締役会設置会社の場合、3ヵ月に1回代表取締役および業務執行取締役として取締役会に選定された取締役は、自己の職務執行状況を取締役会に報告する必要があります。

そのため、3ヵ月に1回は必ず取締役会を開催する必要があり、取締役会がない会社と比較すると会社の手続的な負担が大きくなってしまいます。

また取締役会設置会社だと、全ての株式に譲渡制限がついている非公開会社である場合でも、招集通知を株主総会の1週間前までに株主に対して発送する必要があり、柔軟な株主総会の開催が取締役会非設置会社に比べて難しくなる可能性があります。

IPOを目指す場合は、コーポレートガバナンスの観点から上場前に取締役会設置会社となることが求められます。

しかし上記の観点を踏まえて、設立間もない時点では取締役会設置会社とするかどうかを検討しましょう。

資本金はいくらにするか

最低資本金制度がなくなったため、極論を言えば会社法上は資本金が1円でも株式会社を設立することが可能です。

しかし、設立後に業務に必要な備品を購入するための経費や従業員を雇った場合の給与などを支払わなければならない場合に、これらの費用を支払ったらすぐに債務超過になってしまうため、あまり小さすぎる資本金はお勧めできません。

一方で資本金が大きすぎても、課税上の負担も大きくなってしまいます。

例えば、以下のように、コストの観点から資本金が大きすぎるのもデメリットがあります。

  • 法人税については、資本金が1億円を超えると中小企業としての特例を受けることができない
  • 登録免許税に関しても、資本金が1億円を超えると高くなる場合がある
  • 資本金が1,000万円未満の場合、設立した日の属する事業年度については消費税が免税される
  • 役員における事項の変更の登記は原則として1件につき3万円だが、資本金が1億円以下の場合は1万円

銀行から借入れをする際に資本金の金額を見られるため、ある程度の金額を資本金としなければなりませんが、ベンチャーの創業の時点で銀行からの借入れについてそこまで気にする必要はないでしょう。資本金は、このような観点からも必要以上に大きくする必要はありません。

以上をふまえて、なるべく小さい金額だが、設立後に必要な費用を支払ってもすぐに債務超過にはならないくらいの金額で設立時の資本金の金額を設定するべきだと言えます。

会社設立は、発起設立

会社を設立する際に検討しなければならないポイントについて述べましたが、最後に会社設立の流れを会社設立のために作成が必要な書類とともに説明していきます。

会社設立には、発起設立(会社法25条1項1号)募集設立(同2号)の2種類がありますが、実務上は発起設立で会社を設立することがほとんどです。

  • 発起設立:発起人が発行する全株式を引き受ける方法
  • 募集設立:発行される一部の株式を発起人が引き受け、第三者から残りを引き受ける者を募集するという方法

募集設立の場合は、以下の手続に加えて設立時募集株式の発行に関する手続や創立総会を開催する必要などがあり、手続の違いが生じます。

このような手続的な負担が大きいだけでなく、別段預金口座を作るための手数料がかかることや、銀行によってはそもそも募集設立のための口座を作ることに非対応だったりします。そのため、特別な理由がない限り、発起設立としたほうがよいと言えます。

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