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従業員の給料を減額はできるのか
- パフォーマンスの悪い従業員の給与を減額したい
- やらかした従業員に対して、他の従業員の手前、減給をしたい
会社としては、正当な理由があれば、給料の減額なんて、大丈夫だと思うかもしれません。しかし、法律上は、会社の判断で、勝手にできるわけではありません。
そこで、今回は、従業員の給料を減額する場合の法律について、解説していきます。
給料の減額は、会社の判断で勝手に行えない
まず、原則として、会社の判断で、勝手に行うことはできません。
給料は、労働者の生活の糧であり、労働者と会社の間の雇用契約において特に重要な要素です。
そして、契約は当事者の合意によって成り立っているものですから、その内容を変更するには両者の合意が必要というものです。
これを会社側の判断で、一方的に滅額できないのが原則です。
同意を得て行う場合でも、その同意は労働者の自由意思に基づく明確なものであることを必要とし、黙示の合意の場合はその成立や有効性は容易には認められないため、書面で同意をもらうことは最低限必要です。
成果主義に基づく減額は可能?
上記のようなものであっても、成果主義に基づく基本給制度が禁止されているわけではありません。
また、特定の職務を行うことを雇用契約の内容とし、その職務について、一定期間ごとに評価を行い、賃金を決定するということは可能です。
その結果、従前より給与が減額されるという取扱いは可能です。
もっとも、このような理由に、給料を減額する場合には、客観的な基準が必要です。
そのような基準もなしに、「経営陣の求めている能力に達していないため、給与を減額する」などという理由での給与の減額はできません。
よって、成果主義による給与体系とするには、以下の2つを行う必要があります。
- 賃金規定など、どのような職務・能力が必要かを明記
- 会社による適正な評価
スタートアップやベンチャー企業においては、賃金制度が整備されていない例も多く、会社による定期的な評価さえ行っていないことも多いため、いざ「パフォーマンスが悪いから給与を減額したい」となっても、適法にこれを行うことが難しいこも多いです。
詳細な賃金テーブルを設けておくのが、一番なのですが、スタートアップ・ベンチャー企業は、難しいと思います。
そこで、以下の点は最低限行っておくとよいと考えます。
- 就業規則などで、「役職手当」を設けて、昇格、降格に伴い手当の有無を変更できるようにしておく
- 毎年1回または2回は、取締役による面接を行い、客観的な人事考査項目に従って評価を行う
就業規則なんて作るなんて、面倒くさい!と思うかもしれませんが、就業規則は、経営陣を守る武器になります。雇用する従業員がいる場合には、定めておいた方がよいでしょう。
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年俸制が取っている場合に給与の減額はできるのか
年俸制の場合には、1年間はその額を約束する趣旨であると解されることも多いです。
よって、年俸額で合意している場合は、年度の途中で一方的に会社側がそれを引き下げることは許されない可能性があります。
したがって、評価に基づく給与の見直しを、1年に一度ではなく、複数回行いたい場合は、年俸制はそぐわないことになりますので、注意しましょう。
やらかした従業員への減給(懲戒処分)
従業員が、やらかした場合に、罰として減給する場合です。これは、従業員への懲戒処分として、減給することが可能です。
しかし、その場合に注意が必要なのが、以下の2点です。
- 懲戒処分は、就業規則に定められていないとできない
- 懲戒処分による減給は、労働基準法91条において、「就業規則で、労働者に対して減給の制裁を定める場合においては、その減給は、1回の額が平均賃金の1日分の半額を超え、総額が一賃金支払期における賃金の総額の10分の1を超えてはならない。
例えば、月給20万円の人が、懲戒処分としての減給を受けることとなった場合は、1回当たり平均賃金の1日分の半額を超えてはならないので、1日分を1万円とした場合はその半額である5、000円を超えられません。
また、懲戒処分としての減給は、懲戒処分としてはかなり重いものとされています。よって、会社の勝手な判断ですることはできません。
公務員の懲戒処分について定める人事院の「懲戒処分の指針について」では、以下の2点が規定されています。
- 一定期間無断欠勤
- 兼業禁止規定違反
また、懲戒処分は一事案につき一回が原則ですので、上記の規定は翌月以降も継続して給与を減額することはできません。