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企業の悪口が記載されている!
企業として、悪口がネットに載っている…そんな記載があると、会社の評判にも関わります。そのため、削除やネットに書き込んだ人物を特定したいという要望があると思います。
企業として、会社の悪口を書き込められた場合に、どのような対応をするべきなのでしょうか。その方法を解説していきます。
記事の削除請求
書き込みの削除を求めるには、基本的に、Webサイトの管理会社に対してその削除を求めることになります。
書き込みの削除を求める方法は「任意交渉」と「裁判」の2つに分けられます。
任意交渉
任意交渉とは、管理者に対して「削除してください」と交渉して、削除を求めるものです。裁判を起こす必要がありませんので、コストや手間がそこまでかかりません。
Webサイトを見ると、お問い合わせフォームが設置されていたり、請求の方法が指示されていたりすることがあります。
まずは落ち着いてWebサイトを確認し、指定の方法に従って削除を求めてみるのが、考えられます。
ただし、これは強制力がなく、交渉といっても、最終的には、管理者にお願いすることしかありません。強制力がない場合というのが、デメリットです。
裁判手続(仮処分)
任意交渉と行っても、投稿者の表現の自由との関係で、Webサイト管理会社が削除に応じないケースもあり、そもそも任意請求には応じないという運用方針をとるWebサイトも少なからず存在します。
このような場合には、削除を求める裁判を提起することになります。
削除を求めるにあたっては、迅速性が要求されますので、この際にとるべき裁判手続は「仮処分」と呼ばれる、通常の裁判よりも、迅速な手続きによる手続きを取ることが考えられます。
裁判手続きとなるメリットは、裁判所からの判断には強制力があるというものです。裁判所からの命令であれば、ほぼ全ての管理者・事業者は、削除に応じます。
もっとも、裁判を起こすとなると、書面の作成、資料の準備など、裁判に向けての準備が必要となります。
また、裁判所への申立なので、書き込みの削除を求めるためには、その書き込みによって、名誉権や営業権などの何らかの権利が侵害されているといった法律的な主張が必要になります。
任意交渉に比べると、手間がかかります。
また「仮処分」の場合には、事前に供託金を支払う必要があります。供託金は、後から戻ってくるお金ですが、一回納付しないといけません。金額については、裁判官の裁量ですが、大体20万円~30万円ほどです。
発信者情報開示請求について
投稿者に対して損害賠償等を請求するにあたっては、その前提として、投稿者が誰であるのかを特定する必要があります。
この投稿者を特定する手続きを発信者情報開示請求といいます。
この発信者情報開示請求の手続きについては、2つのステップを踏む必要があります。
第1段階では、Webサイト管理会社やサーバ会社に発信者情報の開示を求めます。しかし、これにより取得することができるのは、IPアドレスやタイムスタンプ(投稿がされた日付・時刻など)のみとなることが通常です。
IPアドレスのみでは、投稿者の氏名や住所等に特定できません。
そのため、第2段階として、取得したIPアドレス等をもとに、通信に利用されたインターネット接続会社などのアクセスプロバイダに対して、投稿者の氏名や住所等の開示を求めることが必要となります。
発信者情報開示請求ができる場合とは
発信者情報で開示の対象となる発信者情報は、以下のものが含まれます。
- 投稿者の氏名
- 住所
- メールアドレス
- IPアドレスやタイムスタンプ
また、法律上の以下の要件を満たした場合には、Webサイト管理会社やインターネット接続会社などのアクセスプロバイダに対して、発信者情報の開示を求めることが認められています。
- その情報の流通によって請求者の権利が侵害されたことが明らかであり
- 発信者情報の開示を受けることについて正当な理由があるとき
この正当な理由とは、投稿者に対して損害賠償請求や刑事告訴を行うなどの法的措置が取ることをいいます。
Webサイト管理会社やアクセスプロバイダに対して、投稿者に関する情報の開示を求める場合には、上記の要件にあたることを主張していく必要があります。
発信者情報開示請求の方法
Webサイト管理者への開示請求
まずは、Webサイト管理会社に対して、IPアドレス等の開示を請求することになります。
Webサイト管理者に対して、IPアドレス等の開示の請求の方法も、削除の場合と同様に「任意交渉」と「裁判」の2つの方法があります。
任意交渉
任意交渉とは、管理者に対して「投稿者のIPアドレスやタイムスタンプを教えてください」ということを交渉していくことになります。
任意交渉は、裁判(仮処分)を起こす必要がありませんので、コストや手間がかかりません。ただし、あくまでもお願いベースなので、請求に応じてくれるかどうかは不確実です。
弊社の経験上、任意交渉で削除には応じてくれるケースはありますが、発信者情報を開示してくれる例はほとんどありません。
また、一定期間を経過してしまうと、アクセスプロバイダが保有しているログが消去されてしまうので、発信者情報の開示には特に迅速性が要求されます。
よって、発信者情報の開示を求める場合には、最初から次の(2)の裁判(仮処分)を起こすケースが多いです。
裁判(仮処分)
IPアドレスの開示を求める裁判(仮処分)は、削除請求の場合と同様に、手間や費用はかかってしまいますが、任意交渉に比べて実効性が高くなります。
上記の結果、IPアドレスやタイムスタンプ情報が分かれば、次のステップです。
アクセスプロバイダに対する請求
Webサイト管理会社からIPアドレスを取得した後は、そこから投稿者の住所や氏名を特定するため、アクセスプロバイダに対して、発信者情報の開示請求を行います。
具体的には、取得したIPアドレスから投稿者がどのアクセスプロバイダを使用したのかを特定したうえで、発信者情報開示の仮処分を行います。
もっとも、発信者情報開示訴訟を提起する前に、気をつけなければならない点があります。それは、アクセスプロバイダのもとに残る記録(ログ)は約3ヵ月から長くても6か月程度しか保存されないことです。
そうすると、発信者情報開示訴訟の判決の結果を悠長に待っていては、そのログが消えてしまい、結局、投稿者を特定できないことになりかねません。
そのため、発信者情報開示訴訟の前に、アクセスプロバイダに対して、「記録を消さないでください」とお願いすることになります。
弁護士等が手続きをすれば、保存に応じてくれることが多いですが、アクセスプロバイダによっては任意のお願いでは応じてくれない場合もあります。
なので、最初に、発信者情報消去禁止の仮処分、つまり、裁判所を通じて記録を消さないよう求めることになります。
これらの方法により記録が保存された場合、発信者情報開示訴訟を提起します。勝訴判決が出れば、契約者(投稿者)の氏名や住所などが開示されます。
開示された投稿者に対してとるぺき手段
以上の手続により投稿者が特定できた場合には、その投稿者に対して、損害賠償を請求する、刑事告訴を行うといった対応をとることが考えられます。
以上が、書き込みの削除や投稿者を特定するための手段の概要となります。
削除だけを求めるのであれば、Webサイトの指示に従うことによって削除を実現できることがあります。したがって、まずは落ち着いて、Webサイト全体を確認するようにしましょう。
一方、投稿者の特定まで行うとなると、スピード勝負のところがあります(早くしないと、アクセスプロバイダが保有しているログがなくなってしまうため)。
また、Webサイトやアクセスプロバイダによって対応が異なることがありますので、それに応じてこちらがとるべき手段も変わってきます。
したがって、会社の権利を侵害する書き込みを発見した場合には、専門家と相談のうえ、早期にかつ慎重に対応することが必要です。