スタートアップやベンチャー企業が大学と産学連携事業をするときに法律で注意するべきこと【2020年9月】

会社運営に必要な法律

スタートアップ・ベンチャー企業で「大学との産学連携の事業で共同研究開発契約を締結することになった」弊社にも、そんな相談が増えています。

産学連携の事業を行うにあたっては、大学との間で共同研究開発契約を締結したり、大学教授に対してインセンティブとして会社の株式やストックオプションを付与したりするケースが多くあります。

大学は教育研究機関としての立場を有しており、大学教授はその一員として大学の規則の適用を受けるため、一般企業や個人事業者との取引にはない注意点として、大学の内規等との関係で矛盾等の問題が生じないかを特に注意する必要があります。

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研究結果の知的財産権

研究開発成果に関する知的財産権の帰属は、産学連携事業における最重要事項の1つです。

例えば大学と企業が共同研究開発契約を締結する場合、双方が知的財産権を共有する旨を規定する例が多いと考えられます。

大学教員と企業が顧問契約などの形で技術指導等の契約を締結する場合、技術成果の知的財産権は企業側に帰属する旨定めるケースもあります。

そもそも、特許や著作権といった知的財産権は、実際にその創作に携わった当事者に権利が発生します。

上記の顧問契約の例で、大学教員が技術成果の創作の大半を行った場合、理論的には、いったん大学教員側に知的財産権が発生し、そのうえで契約に基づいて企業側に権利が移転するということになります。

ここで注意が必要なのは、大学の内規上、このような教員の活動により生じた知的財産権が大学(教員個人でなく)に帰属するものと規定されている場合です。

そのような場合には、そもそも大学教員に権利が帰属していないので、大学教育から企業に知的財産権が譲渡されるという契約があったとしても、契約自体が意味のないものになってしまう可能性があります。

したがって、知的財産権の帰属に関する大学の内規を確認しておくことは重要です。

一般的には、大学の研究活動に関して生じた知的財産権は大学に帰属するルールになっていることが多いため、企業が大学との間で共同研究開発契約を締結する場合は問題になりにくいですが、企業が大学教員個人と顧問契約などを締結する場合は注意が必要です。

大学教員の兼業に関する内規

各大学は、兼業規程等の内規により大学教員の兼業についての規制を設けているのが一般的です。

そのため、大学教授が個人として企業と技術指導等のために顧問契約などを締結するような場合には、その業務に従事することが、このような兼業規程等の違反とならないかに注意が必要です。

規制対象となる場合には、大学への報告や大学からの許可の取得など、各大学における兼業規程等の内規に従った手続を大学教授に行ってもらう必要があります。

利益提供に関する内規

各大学は、倫理規程等の内規により利害関係者等から教職員が利益の提供を受けることについて一定の規制を設けているのが一般的です。

そのため、大学教員に対して、会社の株式やストックオプションを付与することが、このような倫理規程等による規制対象とならないかを確認しておく必要があります。

利益相反に関する内規との関係

産学連携においては、大学教職員は企業との関係で一定の義務や利益を有することとなり、その内容が大学教職員としての職責に反するケースが生じ得るため、各大学は、これに対処するために利益相反ポリシーなどの内規を定めているのが通常です。

一般的には、教育研究等の大学教職員としての義務よりも、自己または第三者の利益を優先させる行為が利益相反行為とされ、例として、共同研究開発により生じた権利などを不当に自己が関連している企業に帰属させる行為などが考えられます。

また利益相反のチェックのため、教職員は企業等に関わる活動状況、企業の株式取得の状況などについて大学に対する報告義務を課されるヶ-スが多いです。

そのため、大学教授に株式を発行すること自体が許容される場合でも、大学教員が内規で課される報告等を履行しているか確認することや、大学教授とのやりとりにおいて利益相反が問題になるような行為がなされないかに注意することが必要となります。

産学連携事業は注意が必要

スタートアップ・ベンチャー企業は、イケイケドンドンでビジネスをしています。しかし、大学などの研究機関は、それとは違う理屈で動いています。

また、大学側の規定に違反してしまうと、事業そのものがとん挫してしまう可能性があります。

企業側としても、大学教員などに配慮し、確認事項を一つずつクリアしていくようにしましょう!

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