M&Aやバイアウトのデューデリジェンス(デューデリ)における4つの注意点

M&Aの法律

komon5000

M&Aやバイアウトのデューデリジェンス

バイアウト時の法務は、専ら買い手側企業による買収先企業のデューデリジェンスがティールの決め手になります。

買い手側としては、買収先企業に法的リスクが存在し、将来の長期的事業運営が困難な場合には買収交渉自体を中止するブレーキ機能を果たすことになります。

また、リスク事由が一部存在した場合には、ディスカウント要素として買収金額の減額要素で査定することになります。

売り手側としても、買い手企業によるデューデリジェンスにより問題点が指摘された場合に、法的事由を適切に説明し、決してリスク事由ではないと説明することになります。

また、これらのデューデリジェンスによって、把握したリスク事由を踏まえて株式譲渡契約交渉の局面においても反映していくことになります。

売り手側企業は、査定されたリスク事由は、表明保証から除外し、リスク事由を排除するよう義務として課せられることとなります。

デューデリジェンスの内容

M&Aのデューデリジェンスであるが、調査観点から類型化されるもので、一般的には、以下の5つの観点から行われることとなります。

  1. ビジネスデューデリジェンス
  2. 財務デューデリジェンス
  3. 法務デューデリジェンス
  4. 人事デューデリジェンス
  5. ITデューデリジェンス

各デューデリジェンスについて、内容を解説していきます。

(1)ビジネスデューデリジェンス

これはビジネス的観点から調査を行うものであり、買収先企業内の調査と企業外の市場全体の調査という2つの観点で調査されます。

買収先企業内の調査は、ビジネスモデル、収益構造、事業構造を調査対象とするが、さらに細分化され、サービスの購買層の把握、セグメントごとの収益構造の把握、仕入先、販売先の選定基準、社内プロセス、業務フローの把握、これらの問題点とリスク分析といった、企業内に関わるあらゆるビジネスプロセスがデューデリジェンスの対象となります。

特にこれらのプロセスなどに問題点が発見される場合には、買収後、自社との融合を図る上で重大な事業障壁となる可能性も高く、事業シナジーを図るどころか買収企業、被買収企業とで大きな軋轢を生むような結果となりかねません。

リスク分析の上において、リスクは除去することができるか、あるいは修繕が困難な性質を有しているかも分析されます。

これらのビジネスデューデリジェンスを行った上、買収検討企業は、自社のビジネス環境をあわせ整理し、販売、発注、開発などの各プロセスにおいてのシナジーの有無、その規模等を分析し、買収交渉の決定を行う必要があります。

(2)財務デューデリジェンス

財務デューデリジェンスでは、買収先企業の過去及び現在の財務状況を把握すること、そして財務の状況から将来発生するリスク事項を調査することにより、将来の収益期待を分析することも目的となります。

買収先企業から提供された各計算書類、具体的には貸借対照表、損益計算書、キャッシュフロー計算書等を確認することとなりますが、これらの計算書類から財務状況を確認するのみならず、計算書類に計上されていない潜在債務、重大な簿外債務など、不正な会計処理の発見も重要な目的の一つです。

また、会計のみならず、買収先企業の税務リスクについても調査・分析します。

過去の税務処理を調査することにより、買収後に予期せぬ税務リスクを負わぬよう多角的に分析することになります。

これらの事項を適正に調査分析することにより、買収先企業の企業価値を算定の上、買収価格の交渉へと移ることとなります。

また、これらの財務デューデリジェンスの結果は、後述のように株式譲渡契約書における表明保証条項や被買収企業の義務として定めるため、法務部門としては財務情報を把握しておくことが望ましいです。

(3)法務デューデリジェンス

法務デューデリジェンスの目的は、買収先企業の法的問題点を洗い出し、これらの問題点によって継続的な企業運営を図ることが可能かを判断することにあります。

例えば、事業を行う上で必要な許認可を取得しているか、あるいは許認可を取得していたとしても違法性を伴っていれば事後的に行政処分が科される可能性もあります。

そのため、業法の欠格事由、禁止事由を踏まえて企業の実態を綿密に調査する必要があります。

また、株式関係や組織関係などの会社の根幹を示す事項についても抜け漏れが許されない法務調査事項となります。

現在の株主関係を調査するだけでも、株主名簿、株主の変遷を証明する過去の株主総会議事録、取締役会議事録などの書面を変遷ごとに確認する必要があり、これらにつき、会社法上の手続きを履行しているかを調査することとなります。

法令のみならず、重要な取引における契約書調査も調査事項となります。

現在の収益を維持するために必要な取引先や提携先との契約書が期間満了又は解除規定により、契約が終了することによって、期待される業務が行えなくなる可能性があります。

これらの契約書面の確認においては、会社の支配関係が変更された場合には解除の対象となる、いわゆる「ChangeofControl条項」の存在も確認されます。

契約解除に伴い、多額の違約金が課せられている継続的取引に係る契約書も存在するため、リスクの多寡は今後の企業運営に影響します。

かかる契約書の確認において、全ての契約書面を確認することは費用・時間の観点から適切ではなく、買収の規模に応じた範囲での確認を行うことが必要です。

(4)人事デューデリジェンス

人事デューデリジェンスとは買収先企業を人事的観点から調査・分析するものであり、とりわけ定量的に計ることができない難しさがあります。

定量的に従業員数、各事業部における配分状況、固定費の状況、退職金の発生見込み金額などは把握可能ですが、優秀な人材の買収後の流出可能性、組織文化の融合性、人材マネジメント戦略、昇進基準の変更による買収先企業の人員の反発可能性といった予測困難な発生可能性を見通しをたてる必要があります。

買収後の企業統合時に人事制度の統合を図ることになるため、事業を支える優秀な人材が将来にわたっても活躍できるような環境を整備しなければなりません。

人事デューデリジェンスによって発見された人事リスクに応じて、統合の方法やプロセスを思案し、統合後の円滑な事業運営を図ることが必要です。

デューデリジェンスは、注意が必要

以上のように、デューデリジェンスは、様々な要素を考慮する必要があります。

どこまでの範囲でデューデリジェンスをするか、デューデリジェンスするとして、専門家にどこまで任せるかを考える必要があるのです。

komon5000