前回、大規模案件で、契約不履行をしてしまい、取引先に土下座した中野青年…
しかし、取引先は、意外と笑顔で、「あれ、これ許してくれるパターン?」と思った中野青年…
IT起業家・中野秀俊の起業バカ一代【vol.9】転落への第一歩・契約不履行
目次
違約金?逸失利益?…
そんな相手方の担当者ですが、微笑みを浮かべながら、こう言ったです。
「まぁ、過ぎたことは仕方がない。契約書もあるので、今後は、それに沿って、進めましょう」
強面の担当者…てっきり「ゴルァ、どう落とし前つけるんだ!東京湾にコンクリ詰めで、沈めるぞ、ワレィ!」みたいなことを言われると思っていただけに、予想外の反応でした。
しかし…次の瞬間
「この契約書によりますと、契約書○条には、契約不履行の場合の違約金が定められています。それによると、違約金の金額は、取引金額の2倍となっています。」
違約金?
「また、この条項によれば、損害賠償の範囲は、営業損害や当社の将来的な利益も入っています。いわゆる直接損害だけでなく、逸失利益などの間接損害も含むとなっています。」
間接損害?逸失利益?
「なので、今回の契約不履行により、当社が被った損害は、これだけになります。」
その数字を見た瞬間、中野青年は、目を疑いました。
そこには、今まで見たこともない金額が…
「こ、こんな…に、なるんですか?」
「はい。全て契約書に書いてある通りですよ。」涼しい顔でいう担当者。
契約書には、難しい言葉並んでいましたが、確かに、担当者が言う言葉が並んでいました。
ですが…正直、契約書の中身なんて、確認していません。
相手の会社も、ちゃんとした会社なので、大丈夫だろうと思って、判を押したものです。
そのことを担当者に伝えると…担当者の顔色が変わり
「あなた、会社の代表者ですよね⁉︎契約書の内容を知らなかった…が通用すると思っているんですか⁉︎」
正論すぎて、言葉も出ない中野青年。
ずっと、伏し目がちの中野青年に、担当者が言いました。
「まぁ、私達も鬼ではない。この金額を一括で支払えとはいいません。分割払いに応じる余地はあります。次回までに、支払計画を提示してください」
そこからの帰り道…
違約金とやらの金額の多さに、呆然とする中野青年。
今、弁護士となった私から、当時の中野青年にアドバイスするとしたら…
「そもそも、損害金額、正しいの?」
「違約金条項も、ちゃんと規定されている?」
など、争い方は、たくさんあるし、交渉の余地はたくさんあるよといえるのですが…
当時は、法律のことなどまるで、分からなかった中野青年
元来、性格が真面目な中野青年は、違約金を相手の言われた通り、きちんと支払わなければならないと思っていたのです。
返済契約を練るも…行き詰まり
なんとか、違約金を払わなければならない
中野青年は、共同経営者のYくんと支払計画を練りますが…
現状のHYパートナーズの体力では、一年以内の完済は不可能という結論になりました。
それでも、相手方は、「支払計画、どうなっていますか」という催促の電話が頻繁にくるようになり…
耐え切れずに、多額の違約金を1年で支払うという内容にサインしました。
HYパートナーズ、終了…
そこからは、違約金を払うために、大幅に売り上げを上げる必要が生じました。
しかし…そんなに簡単に上がるはずもありません。
なりふりかまわず、受託開発の案件も受け、何とか違約金は支払っていましたが…
違約金を支払う→キャッシュが減る→十分な仕入れが出来ない→売り上げが減る→それでも、違約金を支払う→キャッシュがさらに減る…
まさに負のスパイラルにはまっていきました。
少し前までは、全てがうまくいっていたのに、ふとしたきっかけで、全てが反転していく…
まさに経営の恐ろしさを目の当たりにしました。
そして、違約金の支払いを三回終えたとき…共同経営者のYくんから、
「もう、事業続けていくの、無理じゃないかな。」とポツリ。
それは、中野青年も気づいていたことでした。しかし…
「ここで、諦めるのかよ!ふざけんなよ!まだやれるって!借金してでも、違約金返して…まだやれるよ!」
「傷口が広がる前に、終わりにした方がいい。俺たちは、負けたんだよ」
…何も言い返せない中野青年。
ここで、中野青年とYくんが、全てをかけたHYパートナーズの事業に終止符が打たれました…。
事業を終わりにしたら、全てが終わる…中野青年はそう思っていました。
しかし…このときはまだ、地獄の入り口に過ぎなかったことを、中野青年は気づいていなかったのです。