ベンチャーキャピタルとの資金調達の交渉で「新株予約権付社債(CB)での投資にしたいとの提案を受けました」という話は、結構あります。
しかし、いきなり、CBとか言われても…という感じだと思います。そこで、今回は、新株予約権付社債について、解説します。
目次
新株予約権付社債って、なに?
新株予約権付社債は、文字どおり、新株予約権が付された社債です。新株予約権とは「あらかじめ決められた価格で、将来株式を取得できる権利」といえます。
「CB」とも言われますが、これはConvertibleBondの略で、新株予約権を行使するときに金銭の払込みに代えて社債を出資(現物出資)する条件になっている新株予約権付社債を意味します。
これによって社債が株式に転換するような形になるため、転換社債型新株予約権付社債とも言われます。
CBの発行手続は、株主総会の特別決議によって新株予約権の内容や社債の条件等の募集事項を定め、取締役会の決議によって割当先を決めて割当先と引受契約を締結して発行に至るのが、典型的な発行手順です。
新株予約権社債の利用場面
CBを取得した投資家は、社債の償還期限を待って社債を償還してもらう選択肢と、新株予約権を行使して社債を株式に転換する選択肢があります。
このことからCBは、投資側にとってのローンとしての安全性と証券としての投機性を併有するものです。
ベンチャー投資では、株価の設定が難しいといった場合に、次の本格的な資金調達までのブリッジローン的に、CBを利用するケースが多いです。
投資家としては基本的に社債を転換して株式を取得する意向であるとしても、まずは社債として資金を供与し、社債として償還請求できる権利も残しておけるため、投資の意思決定がしやすいことになります。
このように、新株予約権付社債は、シリーズAなどの初期の資金調達で用いられることが多いです。
新株予約権付社債の発行で注意すべきこと
金融商品取引法(以下、「金商法」といいます)において、新株予約権付社債の取得勧誘には有価証券届出書の提出義務があります。
届出書の提出義務を一度負うと、以後、有価証券報告書を毎年提出しなければならないため、スタートアップ・ベンチャー企業が、有価証券の発行にあたっては、届出書の提出対象とならないよう注意する必要があります。
届出書提出義務の基本的な基準は勧誘対象者が50名以上か否かですが、新株予約権付社債については勧誘対象者が50名未満の場合でも、新株予約権付社債の内容が一定の要件(私募要件)を満たしていないと、50名以上に輾転流通する可能性がある証券として届出書提出義務の対象となってしまうことに注意が必要です。
社債金額、枚数の設定の注意点
会社法上、一定の例外に該当する場合を除き、社債の発行に際しては社債の管理を社債管理者(銀行や信託銀行のみが社債管理者となりえます)に委託する必要があります。
しかし、スタートアップ・ベンチャー企業が、このような対応をするのは、現実的ではありません。
- 各社債の金額が1億円以下である場合
- ある種類の社債総額を当該種類の各社債の金額の最低額(例えば、100万円と200万円の券種が混在する社債であれば、100万円)で割った数が50を下回る場合
上記の(1)または(2)では、社債管理会社が不要となるため、この①または②のいずれかの条件を満たすように、社債の枚数および金額を設定する必要があります。
新株予約権付社債(CB)の発行は、十分注意しよう
新株予約権付社債(CB)は、新株予約権と社債と両方の発行要件を満たす必要があります。
初期の資金調達で便利な新株予約権付社債(CB)ですが、きちんとルールを守って発行するようにしましょう!