スタートアップ企業が「投資契約書」を受け取った場合に気を付ける条項【解説】

資金調達で必要な法律

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投資契約書の条項のここをチェック!

スタートアップ・ベンチャー企業について、資金調達をする際に、投資契約書を締結するのが通常です。

そのときに、投資契約書で注意するべきポイントに解説します。

株式引受に関する条項

投資家による出資は投資家が株式を引き受けることになりますので、投資契約書には引き受ける株式やその前提条件となる事項についての条項を必ず記載します。

この中には、引き受ける新株の内容(新株発行要領)表明保証条項前提条件などがあります。

新株発行要領

まず、出資の基本的事項として、投資家が引き受けることとなる新株の内容についての規定(新株発行要領)を記載します。

たとえば、次のような条文が投資契約書に設けられます。


第X条(新株発行要領)

会社は、以下の新株発行要領に従って新株(以下「本件株式」という)を発行し、投資家は会社が発行するすべての新株を引き受けるものとする。

①1発行新株数 普通株式XXX株

②払込金額 1株につきXXX円(合計XXX円)

③払込期日 XXXX年X月X日

④増加する資本金等 資本金:XXX円
資本準備金:XXX円

⑤割当方法 第三者割り当ての方法による


表明保証条項

表明保証条項とは、出資を受ける会社が投資家に対して、会社の財務状況を含めた会社の状況や提供した情報などについて真実であることを表明するものです。

後になって真実ではないことが判明した場合には、投資家が引き受けた株式を買い戻さなければならなかったり、損害賠償請求を受けたりという義務も同時に規定されます。

表明保証条項の注意点は、記載されていることを「真実である」と表明できるものであるか、検討する必要があります。

内容を検討しないままに表明してしまい、後になって事実と異なることがわかると、株式を買い戻す義務が発生する、損害賠償が発生する可能性があります。

代表的な条項は、以下の通りです。


第X条(表明および保証)

会社および株主は、以下の各号に定める郭項が本契約締結日現在において真実であることを表明し、保証する。

① 会社は、適法に成立し、有効に存続している株式会社であること。

② 会社は、本契約を適法かつ有効に締結し、本契約に基づく義務を履行するためおよび本契約に基づく株式を発行するため必要な権限および権能を有しており、必要とされる手続きをすべて適法かつ有効に完了していること。

③ 本契約の締結および義務の履行並びに本契約に基づく株式の発行を理由として、法令、規則、通達、命令、会社の定款その他の規則または会社を当事者とする第三者との契約に違反が発生しないこと。

④ 会社が行なっている事業が適法かつ適正に行なわれており、事業に必要とされる許認可、登録または届出が適正に行なわれていること。

⑤ 会社の発行済株式総数は、普通株式XXX株のみであり、新株予約権、会社の株式に転換または会社の株式を取得できる権利その他会社の株主構成および資本構成に変動を及ぼすいかなる証券または権利も発行または付与されておらず、会社においてその決議も行なわれていないこと。

⑥ 会社が投資家に提示または提出した定款、株主名簿、財務諸表、事業計画書、その他会社の事業、財務、人事等に関する資料の記載および情報が真実かつ 正確であること。

⑦ 会社について何らの訴訟等の法的手続きまたは行政上もしくは税務上の手続きは係属しておらず、そのおそれもないこと。

⑧ 会社は、これまで税務申告を適正に行ない、公租公課を適正に納付しており、税金の滞納等は存在せず、そのおそれもないこと。

⑨ 会社、会社の株主並びに会社の役員および従業員は、暴力団、暴力団員、反社会的勢力、その他これに準ずるものではなく、一切の関係をもっていないこと。


表明保証条項で注意した方がよい点

表明保証条項ですが、以下のような条項があった場合には、注意が必要です。

会社および株主は、投資家による株式引受の判断に影響を与え得る重大な事項をすべて報告しており、そのほかに重大な事項はなく、また今後重大な事項が発生するおそれもないこと。

このような包括的な表明事項については、「ない」ということを確認することは困難であることから、のちにトラブルとなるリスクを抱えています。

包括的な事項ではなく、具体的な事項のみにしてもらえるように交渉することが最善ですが、現実的には投資家に受け入れられないこともあると思います。

このような事項を表明しなければならない場合には、「会社が知る限り」といった文言を追加することで、装明の範囲を限定することによる対応が考えられます。

「知る限り」という文言を入れることで、「知っていたのに報告しなかった」場合にだけ表明事項違反となることになります。

また、「知り得る限り」というパターンもあります。これは、実際に知っていたかどうかではなく、「知ることができた」場合には表明事項違反となるもので、「知る限り」よりも範囲が広くなります。

表明事項については、内容の確認が最も重要ですが、内容を確認しようがないもの、確認が容易ではないものについては、上記のような「知る限り」といった文言を追加することができるように交渉をするとよいでしょう。

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