M&Aでの売却対価をもらう場合の3つのポイント

M&Aの法律

M&Aの対価について「金銭をどうやって受け取ればいいのか」そんな質問を受けることがあります。

売却したときの対価をどうやって受け取るのかということに解説していきます。

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M&Aの対価を一括でもらう

エグジットとしてM&Aを選択するベンチャー企業の経営者(経営株主)は、ベンチャー企業の株式を売却することによって資金を獲得し、それを元手に新たな事業を始めようとする人も多いと思います。

そのような経営者(経営株主)にとっては、M&Aの対価を金戯で一括に支払ってもらった方が多額の資金を1度に確保できるため、選択肢として最良であるとも思えます。

しかし、いわゆるキーマン条項・競業避止条項がM&A契約において定められていて、すぐに売却する会社・事業から抜けられないことも多いです。

一括で多額の資金を手に入れたからといっても、すぐに新たな郭業を始めることができない可能性があるため、必ずしも一括で金銭を支払ってもらうことが最良の選択とは限らない場合がある点に注意が必要です。

また、ベンチャー企業(の株式)を売却すること自体についてはおおむね合意しているものの、対象会社たるベンチャー企業の事業計画の評価についてM&A契約の当事者間で争いが生じる場合があり、買主が売主の希望する価格では金銭を一括で支払わないという可能性もあります。

M&Aのアーン・アウト条項

さらに、最近では、ベンチャー企業同士のM&Aも増えており、買主側に、一括でM&Aの対価を支払う金銭的余裕がない場合もあるのです。

そこで、これらのような買主から、たとえば、M&A実行日に一定額の対価を支払っておくとともに、M&A実行日後の売上や利益等の一定の指標について目標を設定し、その目標を達成した場合には、その達成分の対価を買主が売主に追加で支払うという、いわゆるアーン・アウト条項を活用することを提案されることがあります。

この場合、対象会社たるベンチャー企業が設定した目標を達成できなかった場合には、売主が追加の金額を得ることができず、低額での売却をしてしまったことになるおそれはああります。

しかしながら、ベンチャー企業を売却すること自体にはおおむね合意しているものの対価で折り合いがつかない場合で、かつ売主が述べるようなキーマン条項等の適用がある経営株主等であるために売却後も一定期間はベンチャー企業の業務に継続して従事する場合には、アーン・アウト条項にしたがって追加の対価を支払ってもらえるようインセンティブが働くため、売主にとっても合理的な条項といえます。

分割支払、エスクロー条項の受け入れるか

上記の通り、ベンチャー企業の売主は経営株主等の個人であることが多いため、M&A契約上の憤務不履行が発生した場合、買主が売主に対して損害賠償請求や補償請求をしたとしても、売主たる個人の資力に問題があり、損害賠償請求や補償譜求が意味をなさなくなる場合があります。

この点を懸念する買主としては、売主に対して、M&Aの対価を一部後払とする、分割支払の方法を規定することを要求することがあります。

売主からみれば、分割支払の方法による場合、買主が支払ってもらえるのかというリスクを負担することになります。

そこで、売主としては、分割支払の方法によるのではなく、対側の一部の支払について、第三者であるエスクローエージェント(信託会社や信託銀行等)に一定期間対価の一部を預けることとし、装明保証違反が認定されるなど、売主の補償義務が生じた場合には、相当する金額が買主に払い出され、それ以外は一定期間経過後に対価として売主に払い出されるという、いわゆるエスクロー条項を用いることも検討されることがあります。

なお、エスクロー条項を用いる場合には、エスクローエージェントの利用にかかる費用を売主と買主のどちらが負担するかという点もあわせて考慮する必要があります。

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