M&Aの手続きが進んでいく中で、MOUの締結を求められることがあります。そもそも、MOUとは何か、どんな効力があるのかについて、解説します。
目次
MOU締結について
M&Aについて、初期的情報が売主から買主に提示され、質疑応答や協議を経たあと売買当事者間で一定の合意に達した場合、両者の間でMOUが締結されることがあります。
このMOUですが、日本語いうと、「覚書」といった意味です。契約書締結の前段階で、お互いの約束ごとを決めておくといった位置づけです。
MOUの効力について
では、MOUについては、法的拘束力はあるのでしょうか?
「覚書」と聞くと、契約書より劣ったものと思われがちですが、「覚書」でも、お互いの合意事項が記載されていれば、契約書と同じ効力があります。
MOUでも、断定的な条件を記載すると、後から裁判で、それは法的な拘束力があると判断される可能性があります。
よって、MOUを締結する場合には、法的拘束力があるものなのか、ないものなのかを確認するようにしましょう!
法的拘束力を発生させたくない場合には、冒頭部分で、「法的拘束力を発生させるものではない」旨の記載をする。
また、各条項に「希望」、「暫定」といった文言を記載することが考えられます。
MOUにおいては、次のような項目が記載されます。
- 譲渡希望日
- 取引の対象範囲(例:売主の保有する対象会社株式100%の譲渡)
- DDの実施
- 独占交渉期間
- 秘密保持
- 取引金額(暫定で、ここは記載されないことも多い)
MOUの取引金額(暫定)の記載方法
MOUにおいて記載する取引金額(暫定)については、2通りの方法があります。
特定金額を提示する方法
この場合、法的拘束力を発生させたくないのであれば、「暫定」・「法的拘束力がない」などの記載した方がよいでしょう。
また、法的拘束力がない場合であっても、特定の金額を記載するということは、この金額がベンチマークになることを意味します。
譲渡金額について、一定の約束であると、受け止め方をする可能性があることを十分理解しておく必要です。
したがって、その後のデューデリジェンスなどで、譲渡金額の減額をする事由が発生した場合には、そのことを十分に説明するなどの対応が必要になります。
金額の幅(レンジ)で示す方法
買主の立場から考えると、取引金額(暫定)を一定の幅で示すことによって,、取引金額の交渉上、柔軟性がでるので、このような表現がされることが多いです。
しかし、金額を示しても、売主側としては、レンジの下限を下回らないと期待される可能性もあります。
この辺り、きちんと説明をすることが必要でしょう。
また、買主側で、柔軟性を持たせようと思い、あまりにも広いレンジで提示する場合も見受けられます。
しかし、このような提示すると、売主側は、本当に買収する意思はあるのかと、不信感を持たれる可能性もありますので、注意が必要です。