目次
出口戦略としてのM&AとIPO
スタートアップ・ベンチャー企業にとって、成長していった結果、出口戦略としては、M&A(バイアウト)とIPO(上場)があります。
ひと昔前は、IPOを目指すことが当然みたいな空気もありましたが、資金調達手段が多様化している中、必ずしもIPOしなければならないといったことはなくなりました。
そこで、スタートアップ・ベンチャー企業としての、M&AとIPOのメリット・デメリットを解説します。
IPOとM&A による売却のメリット・デメリットの整理
このメリット・デメリットは、新規ビジネスの組成の経緯から、ビジネスの特徴、見据える資本政策等によって、様々です。
その会社よって、状況が違うため、一概には言えません。しかし、多くの場合には、IPOとM&Aは、以下のように整理できると思います。
IPOの場合
金銭面
金銭面のメリットは、次のことが考えられます。
- 既存株主による売却益が市場価値の付加にされることにより、大きく期待可能できる
- ストックオプションにより、広く役職員に経済的な利益をもたらす
一方、デメリットは、次のことが考えられます。
- IPO直後の保有株式の全売却は難しい。また、上場後はインサイダー規制等により売却時期が制限される
IPOしても、株主は、すぐには、全部の株式を換金できるわけではありません。
ガバナンス体制
ビジネスモデルとしては、グレーゾーンを突くビジネスモデルは、上場審査で苦難する可能性があります。
法令遵守体制(ガバナンス・内部管理体制等)は、IPOに係る引受審査、上場審査に耐えうる組織設計を、3年以上前から意識し、準備を進める必要があります。
この管理体制構築に相当人的・物的リソースが割かれることになります。
(ただ、東京プロマーケットでは、最短1年半ほどでの上場も可能です。詳しくは「東京プロマーケットの上場への道!スタートアップやベンチャーにとってのIPOとは | Komon5000」を参照してください。
また、上場した後も、決算発表等の適時開示体制、インサイダー取引防止体制等の内部管理体制の維持・強化のコストが・労力が継続的に求められます。
組織面
IPOについては、目指す過程で、組織としての成長(一体感の醸成)が期待できることが挙げられます。
また、役職員に対してストイックオプションを交付していた場合に、IPOに伴うキャピタルゲインの実現が見込めます。
M&Aの場合
金銭面
資本政策との関係とは、創業株主は全株式の売却もできるため、手取額としてはIPOより多額となる場合もあります。
ただし、相対取引で価格決定するため、売却益は、契約交渉力に左右される可能性があることに注意が必要です。
また、創業者・投資家には経済的な利益をもたらしますが、従業員に対しては経済的利益を与えにくいですし、売却先以外の他社との資本業務提携等は困難になります。
大手企業とのCVCなどの場合には、大企業のブランド力や資金力を活用できます。このような買収企業のリソースを活用できるのも、大きなメリットです。
ガバナンス体制
法令遵守体制については、IPOに比べ「ビジネス優先(技術・営業)」で進められます。
買収先企業のデューデリでOKが出れば、手続きが進むことになります。(ただし、デューデリジェンスに備えた最低限の管理体制構築は必要)
組織面
組織面でいうと、大手企業とのCVCや買収などによって、創業時からのベンチャーマインドのあるコア人材が退職するといった事態はよくあります。
また、持株比率の低下により、創業株主自らが経営を継続する場合の経営意欲がなくなってしまうこともあります。
目標地点を見据えた経営を
このように、IPOとM&Aを比較してみました。
どちらが良い、悪いという話ではありません。
ただ、会社の出口として、こういうものがあるんだと思い、スタートアップ・ベンチャー企業を経営することは有意義かと思います。