目次
動画コンテンツなどで、人物が写りこんでしまう
自社で動画コンテンツなどを作成する場合に、撮影していると、一般人が写りこんでしまうことがあります。
このような一般人が写りこんでしまう場合、何か問題があるのでしょうか?
肖像権の問題
例えば、通行人の顔などが写りこんでしまった場合には、本人が特定できない場合を除き、当該通行人の肖像権を侵害する可能性があります。
肖像権は、「自己の肖像(顔や身体)をみだりに利用されない権利」をいうとされています。
よって、他人の顔や身体を勝手に撮影し、公表する行為は、原則として、肖像権侵害になります。
通行人の肖像が映り込んでしまった場合であっても、仮に通行人の後ろ姿だけしか映っていなかったり、非常に小さくしか映っていないため、通行人本人が特定できないような場合は、そもそも肖像権侵害にはなりません。
また、肖像権が侵害されたからといって、直ちに法律上の請求ができるというと、そうとは限りません。
判例では、次のようにされています。
被撮影者(撮られた人)の社会的地位・活動内容、撮影の場所、撮影の目的、撮影の必要性、撮影の態様等を総合考慮し、自己の肖像を撮影・利用されることによる人格的利益の侵害が社会生活上受忍できる限度内のものであれば、肖像権侵害として不法行為(民709条)とならない
例えば、公園という公共の場所での撮影のような場合で、背景に小さく映り込んでしまった程度であれば、肖像権侵害として、損害賠償請求が認められる可能性は低いです。
肖像権侵害のリスクを減少させるためには、以下のような措置が考えられます。
- 外部からも撮影していることが明確にわかるようにする
(例:カメラを外からも見える位置に設置する、カメラマンが腕章をつける等) - もし通行人が撮影されたくなければ、撮影されないで済むような措置を講ずる
(例:事前に撮影することを告知する、撮影されたくない場合には一時的に撮影範囲から退避できるようにする等)。 - 撮影の目的・利用範囲を明示する
(撮影目的や利用範囲を記載した看板を設置する、他のスタッフが周囲に説明する等)
上記1は、自己の肖像が撮影されていることを本人に認識してもらうための措置です。
上記2は、文字どおり、本人の意に反する撮影をできる限り回避してもらうための措置です。後のトラブルを防止するためにも、必要な措置になります。
上記3は、自己の肖像が撮影されていることを認識していても、当該動画コンテンツの目的や内容によっては、撮影・利用されることに心理的な負担を覚えることもあり得るので、撮影の目的と利用範囲をあらかじめ明示しておくことは役に立ちます。
肖像権侵害の損害賠償って、いくら?
仮に肖像権侵害があった場合ですが、いくらぐらいの損害賠償請求が可能なのでしょうか?
一般人が肖像権侵害で損害賠償が認められた場合でも、高額の損害賠償金は認められていません。相場としては、10万円~50万円といったレベルです。
当然、芸能人や有名人などであれば、高額な損害賠償請求が認められる可能性がありますし、肖像権とは別途、パブリシティ権侵害になる可能性もあります。
肖像権侵害がないように、注意する
上記のように、動画コンテンツを作成する上では、肖像権の取り扱いには、注意する必要があります。
上記の通り、一般人の肖像権侵害については、損害賠償金額自体は高額ではありませんが、肖像権侵害があったことが広まるとサービス運営自体に影響が出る可能性があります。
事業者は、この点につき、十分に注意するようにしましょう!